人々の暮らしに溶け込む写真のあり方を問う連載、わたしの「写真と、ちょっといい暮らし」。第2回にご登場くださるのは、コスメのプロデュースやファッションブランドとのコラボ、ラジオパーソナリティなど多岐にわたり活躍するヘアメイクアップアーティストの松田未来さんです。

自身の想いを綴った書籍『私が私らしく生きる美学』(双葉社)を昨年秋に出版した松田さんは、暮らしを豊かにするためのちょっとした工夫を知っています。写真を撮り発信することとの向き合い方、日常生活の中で意識していることについてお話を聞いてみると、松田さんのライフスタイルが多くの女性たちに支持されている理由が見えてきました。

「いいな」の瞬間を、ありのまま写真に切り取りたい

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---- 松田さんはInstagramのフォロワー数が8万人超え。ヘアメイクを手がけた作品のほかに、日々のコーディネートや食事、愛猫の姿などさまざまな写真を発信していますが、写真を撮る時に気をつけていることは何かありますか?

松田さん:わざわざセットして作り込むのではなく、ありのままの姿を撮るように心がけています。作り込まれたものは、あとでその写真を見返した時も「なんだか不自然だな」と感じてしまうので。その時のことを鮮明に思い出せるような、自然な瞬間を撮影しています。

---- 「撮りたい」と感じる瞬間はどんな時でしょう。

松田さん:自分の目で見て「これいいな」「みんなにシェアしたいな」と思った時ですね。でも、誰かのためにではなく自分のために記録しておきたい気持ちのほうが強いかもしれません。

---- だからこそ、飾らず自然体な姿が人気を集めているのだと感じます。ヘアメイクの仕事で撮影現場へ行くことも多いと思いますが、その経験が普段の写真に影響を与えることはありますか?

松田さん:もちろんプロのカメラマンさんの技術には敵いませんが、光の具合やムードの作り方などは無意識のうちに学ばせてもらっていると思います。私は光や色が美しい写真が好きで、自分とはまったく違う視点を持つ写真に惹かれるんです。本格的な一眼レフやフィルムカメラにも憧れますが、日常の一瞬を切り取りたい自分にはスマートフォンが向いているのかなと思っています。

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---- SNSを通じて世の中に写真を発信することについて、意識するようになったのはいつ頃からですか?

松田さん:Instagramを始めたのはサロンに勤めていた頃です。自分の得意とするスタイルや雰囲気を伝えることで、それを求めているお客さまと出会えるかなと思い、好きな世界観を発信するようにしていました。

苦手な方向性に応えようとしても相手を100%満足させられないかもしれないし、それなら私の作るヘアスタイルを好きだと思って来てくれた方に対応するほうがお互いにハッピーかなって。だから、はじめからプライベートな感覚ではなく「外に向けて広く発信しよう」ということを意識していましたね。

---- 徐々にフォロワーが増えていく中で、心境に何か変化はありましたか?

松田さん:以前は「私はこういうスタイルができますよ」とアピールする場としてSNSを活用していましたが、最近は本当にいろんな人が見てくださっているので、私が純粋に「いいな」と思ったものを載せて、それを皆さんに自由に捉えてもらえたらと思っています。

フォロワーの方々は私の発信をとてもポジティブに受け取ってくれるんです。ただの日記のような投稿なのに「元気をもらえました!ありがとうございます!」って言ってもらえることもあったりして。自分が想像もしていなかったうれしい言葉をよくいただき、自分の長所や得意なことを改めて気付かされることが多いです。

---- そうやってたくさんの人に喜んでもらうことが、「次はこのジャンルに挑戦してみよう」とご自身の活動の幅を広げるきっかけにもなったのでしょうか。

松田:まさにそうだと思います。本を出版することができたのも、私の文章をもっと読みたいと言ってくれる方々がいたおかげ。コメントなどで意見をもらうと、私も「じゃあそれにチャレンジしてみよう」と思ういい機会になっています。

私のクリエイティブを通じて「ワクワク」してもらいたい

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昨年出版した書籍『私が私らしく生きる美学』には、松田さんの暮らしのこだわりが詰まっています。

---- 松田さんはヘアメイク以外にもアパレルブランドとのコラボレーションや書籍の出版、ラジオなど幅広く活躍していますが、すべての活動に共通するコンセプトなどはありますか?

松田さん:私の本を読んでくれた人も、プロデュースしたコスメや服を身につけてくれた人も、みんなに前向きなパワーを受け取ってもらえたらと思っています。サロンに勤めていた頃には、担当したお客さまが自分に自信を持って「この髪型でどこかへお出かけしたい」と思ってもらえることを目指していましたし、私が作るものを通じてワクワクしてもらえるのが嬉しいんです。

以前トークイベントをやらせてもらった時に、フォロワーさんが「自粛期間中に気分が落ち込んじゃったけど、未来さんのYouTubeを見て美味しいごはんを作ろうって思えた」「子育てが忙しくて服なんてどうでもいいと思っていたけど、家の中でもおしゃれしようって思えた」と言ってくださって。そうやって人に活力を与えられる活動をしていきたいなって常に考えています。

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---- 松田さんのInstagramは良いエネルギーが集まるコミュニティになっているように感じます。普段の生活の中で幸せを感じる瞬間はどんな時ですか?

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書籍『私が私らしく生きる美学』より(撮影:東 京祐)

松田さん:猫と一緒に昼寝をしている時ですね。1人で昼寝をすると起きた時に罪悪感があるけど、猫がいるおかげで「あー、最高の昼寝をした!」って充実した気持ちになれちゃう(笑)。

---- 今回、愛猫のマドレーヌちゃんの写真を富士フイルムのWALL DECOR(ウォールデコ)にしてみました。

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松田さん:こんなに綺麗になるなんて! 長く大切に飾りたいと思ったので、耐久性に優れている「ミュージアムメタル」を選んだのですが、想像以上の仕上がりで感動しました。自宅の壁にピクチャーレールが付いているので、そこに飾りたいなと思います。写真をパネルにプリントしたのは初めてなんですが、意外と簡単にできるということがわかったので他にも色々やってみたくなりました。

自分に素直に、小さな挑戦を繰り返して毎日を豊かに

2101_01_08.jpg 書籍『私が私らしく生きる美学』より(撮影:東 京祐)

---- 生活の面で、憧れの人やお手本にしている人はいますか?

松田さん:それがいないんですよね...。憧れの存在がいたらいいなって思うこともありましたが、今振り返るといなくてよかったかなと。素敵だと思う人はたくさんいますが、私は周りをあまり気にせずに我が道を進んでいます。仕事に関しても、名刺に肩書きを書かないようにしていて。一応ヘアメイクというプロフィールはありますが、それに縛られずに新しい働き方を開拓していきたいんです。

---- 多様化する今の時代にすごく合った生き方をされていますよね。その人の世界観に憧れてヘアメイクを真似するということはよくあると思うのですが、松田さんの場合はそれだけでなく、考え方や暮らし方に共感している人が多いように感じます。

松田さん:文章を書いたりラジオに出演したりする機会をもらえたことで、私のライフスタイルを知ってもらえたのは幸運でした。この本はWEBでの連載が元になっているのですが、最初は「ヘアアレンジの連載をしませんか」って誘ってもらったんです。でもそれはやりたくなかったから、「読んだ人に自分を好きになってもらえるような連載をしたい」とお伝えしたら、文章を書かせてもらえることになって。

---- 今はなかなか難しいですが、読者の方々と直接お会いできる機会があったらいい時間になりそうですね。

松田さん:何回か出版イベントを開催したのですが、みなさんとても喜んでくださって。インスタライブでやりとりするのとはまた違う、よりプライベートな時間を過ごすことができました。今後はもっとたくさんの人に会いたいなと考えています。

---- 最後に、暮らしを豊かに過ごすうえで大切にすべきことについて教えてください。

松田さん:第一に、自分の気持ちに素直に生きることが大切なのかなと思います。我慢をして押し込めてしまうより、食べたいものを食べて、寝たい時に寝て、自分が気持ちいいって思えるような生活をするほうがいいと思うんです。

お手本になる人をそっくりそのまま真似するのもいいけれど、自分で判断することも素敵だと思うので、小さなトライアンドエラーを繰り返してみたりして。気になっていたショップに足を運んでみるとか、どんな些細な一歩でも、そこから自分の世界が広がっていくと思います。

松田未来さん

兵庫県生まれ。関西のヘアサロンで美容師として活動後、2016年から東京に拠点を移し、ヘアメイクとしてのキャリアをスタート。自身のコスメブランド「rihka」を立ち上げるほか、アパレルブランドとのコラボレーションやラジオパーソナリティなど幅広く活躍中。2020年9月に著書『私が私らしく生きる美学』(双葉社)を発売。

Photo by 大西日和

Writing by 大場桃果

WALL DECOR(ウォールデコ)
お気に入りの写真をパネルにできるサービスWALL DECOR。どんな写真にもマッチするシンプルなデザインで、飾る場所も限定しません。松田さんはお気に入りのソファスペースに、とのことで、A4サイズのミュージアム メタルでプリントされました。
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