山口県・宇部市で3代続く「山本写真機店」の店主として、20年近く写真の仕事を続けてきた山本陽介さん。前編では、誰もが日常的に写真に触れているSNS時代だからこそ、再確認したい"写真の本質"について語っていただきました。

後編では、全国にファンを持つフィルム現像ラボとしてのこだわりや、山本写真機店の店づくりについて。そして、ふたりの子どもを持つ山本さんが感じる家族を撮ること、写真を飾ることの魅力など、"写真と暮らし"についてもお伺いしていきます。

老舗の写真店から、理想の写真店へ

2201_02_02.jpg

---- 山本写真機店は2012年にリニューアルして、スタジオ、ギャラリー、ラボを併設した新しい姿になりましたが、当時はどんな思いがあったのですか?

山本さん:山本さん:いちばん最初は、とにかく「おしゃれにしたい」みたいな欲があったと思います(笑)。やっぱり長く営業しているお店って、街の風景の一部のようになっていて目にとまらなかったり、初めての人には敷居が高かったりするじゃないですか。自分たちがやっていることやコミュニティには自信があったから、あとは誰でもそこに参加しやすいような箱があれば、もっと良くなるんじゃないかなと思ったんです。

2201_02_03.jpg

---- それで「写真のセレクトショップ」をイメージした現代的な空間になったのですね。

山本さん:お店の名前も最初は英語に変えようとしていたんですが、周りの人にはけっこう反対されたんです。どうしようか迷っていたとき、TSUTAYAの「蔦屋書店」や、カメラのキタムラの「北村写真機店」が続々とオープンして。「これはまた日本語の時代が来るかも」という流れを感じて、創業当初の名前を残す形にしたんです。店舗のリニューアルによってお客さんも増えて、"理想の写真店"に近づいたような感覚がありました。

---- そこから約10年が経って、現在はいかがですか?

山本さん:今はまた少し変わってきているかもしれません。以前、写真家の濱田英明さんが展示で山口に来てくれたとき、撮影したフィルムを僕に預けてくれて。会ったばかりで現像をまかせてくれたことにも驚いたんですが、その写真を「山本写真機店で現像しました」って言葉を添えてSNSに載せてくれていたんです。

それがものすごく反響があり、ありがたいことに郵送でのフィルム現像依頼が全国からたくさん届くようになりました。そうすると、僕は1日のほとんどの時間を現像作業に費やすことになり、だんだんお客さんとのコミュニケーションの時間が減っていってしまって。もちろん、濱田さんにまったく非はないし、ありがたいことなんですけどね(笑)。

2201_02_04.jpg

山本写真機店にて。現像のお仕事の1コマ

---- 急に人気が爆発したことで、ラボとしてとても忙しくなったんですね。

山本さん:とくに3~4年くらい前はそうでしたね。店頭のお客さんなら、作業しながら対応することもできるんですが、郵送だとなかなか会話のキャッチボールができないですし、1日2000枚くらいスキャンするので、けっこう大変で(笑)。でもその1枚1枚は全部、誰かの「いいな」とか「楽しい」が詰まった瞬間なんですよね。それに救われるというか...大変だけど、やっぱり楽しいんです。

最近はストレスなく頑張れるコツもわかってきて、僕やスタッフの作業自体も早くなってきたので、ちょうどいいバランスになってきたかな。わざわざこんな本州の端っこまで写真を送ってくれるんだから、それに見合った仕事がしたいという思いもあります。

心がけるのは、被写体が引き立つ"普通さ"

---- 現像するときにこだわること、意識することはありますか?

山本さん:やっぱり、僕は「アルバムに入れて写真を見る」という行為が、いちばん面白いと思っているんです。写真は過去を振り返る「いつか」のためのメディア。だから色やトーンを個性的にするというよりも、そこに写っているものに目がいくような、自然な仕上がりを大事にしています。たとえば何年も前の家族写真を眺めているときって、写真としての完成度とかよりもそこに写っている情報に自然と目がいきませんか。表情だったり髪型だったり、今より若い自分だったり(笑)。

2201_02_05.jpg

だから、「普通の色と明るさ」がいちばん良いって僕は思ってるんです。青っぽかったり黄色っぽかったりすると写真の雰囲気は出るけど、クリアな方が被写体が引き立つというか。そんなふうに色の被りをなるべく取り除きつつ、今の時代らしさも少しずつのせていく。"時代性と普遍性"が両方あることが、こだわりかもしれないですね。

何気ない1枚が、特別な1枚になっていく

---- 家族や身近な人の写真って、どんな瞬間に撮りたくなりますか?

山本さん:子どもが小さいときって、いつも楽しそうに笑ってて絵になるし、誰もが名カメラマンになれる期間なんですよ。でも、成長していくと嫌がられたり、自然に写真を撮らせてくれる機会っていうのが減ってくる。だから「今日は撮られてもいいや」って思えるような、楽しい瞬間に撮るようにしています。

---- 家族を撮ることの魅力って、どういうところでしょう。

山本さん:そんな大層な理屈はなくて、ただただ可愛いからなんですよね(笑)。親として、子どもが小さいときの写真を見るのって、やっぱりすごくいいんですよ。本当に一瞬の写真なんだけど、そこから色々なことを思い出せるというか。その日の出来事だったり、当時の自分自身だったり、1枚の写真にたくさんの思い出が内在しているんです。

たとえば今回ウォールデコでも使用した娘ふたりが並んでいる写真は、長女は普通に椅子に座ってるんですけど、次女は机の下の見えないところで妻が支えてるんです。「子ども店長」っていうタイトルの写真で、自分のなかではすごく面白い1枚(笑)。そうやって、時間が経てば経つほど良くなっていくような写真が撮りたいですね。

壁の写真が、家族の歴史を語ってくれる

2201_02_08.jpg

---- 部屋に飾っているのは、やっぱり家族の写真が多いですか?

山本さん:そうですね。うちのお客さんに東京で仕事をしてる大林直行くんというフォトグラファーがいるんですが、山本家の記念写真は彼がちょこちょこ撮ってくれるんですよ。家族4人だけの写真って意外と少ないので、それは部屋に飾っています。

2201_02_09.jpg

---- 写真を飾ることで、生活にどんな影響がありますか。

山本さん:よくアメリカの家庭とかでも、色々な額に入れた家族写真をたくさん飾ってるじゃないですか。でも、飾っている本人たちにとっては日常生活のなかにあるものだから、普段はそこまで意識してないんですよね。だけど、たまに目をとめて眺めていると、やっぱり「良いな」って思う。今回のウォールデコの仕上がりがすごくよかったので、もっと増やしたくなってきて、今は頑張って写真を選んでいるところです。

---- ウォールデコを使用した感想はいかがですか?

山本さん:僕はカジュアルタイプを選んだのですが、すごく軽いし、飾り方も簡単だし、サイズや質感も選べるし、仕上がりも綺麗で、楽しいですよね。写真の色も、店で出しているものと同じ感じで出てくれて。山本写真機店でも、写真館のような感じで記念写真の撮影をしているので、お客さんたちにも勧めると思います(笑)。

---- もう1枚の写真も素敵ですね!

山本さん:これは、さっき話した娘ふたりが並んでいる写真から、もう少し成長したあとのものです。撮ろうとしたら長女がこっちに向かって走ってきて、ボケてるんだけど、それはそれで可愛いなって。こうやって家族の成長をずっと記録しながら、その時々で好きだと思う写真を飾って、壁をデコレーションしていきたいですね。最終的に、それが「山本家ヒストリー」みたいになってくれたら最高です。

山本陽介さん(@yamacame

1979年生まれ。山口県・宇部市で3代続く「山本写真機店」の現店主。2012年にリニューアルした店舗にはスタジオ、ギャラリー、ラボなどを併設し、写真のワークショップや展示も定期的に開催している。また、「人生を記録しよう」をテーマに写真教室「cheeeese!!(チーズ)」を主宰、写真を撮る楽しさを多くの人に伝えている。

Photo by 今川裕季子

Writing by 坂崎麻結

山本さんが審査員を務めるギャラリーフォトコンテスト「#お部屋に飾りたい1枚」を1月31日(月)まで開催中です!ぜひご参加ください。フォトコンテストの詳しい内容についてはこちらの記事をご確認ください。

2201_02_12.jpg

WALL DECOR(ウォールデコ)
お気に入りの写真をパネルにできるサービスWALL DECOR。どんな写真にもマッチするシンプルなデザインで、飾る場所も限定しません。山本さんはカジュアルタイプをセレクト。シンプルで普遍的なデザインだからこそ、飽きが来ず、ずっとお気に入りであり続けてくれます。
この記事をシェアする

New
最新の記事