Instagramやブログに旅先での思い出を綴るのは、旅行の醍醐味のひとつ。しかし、「楽しかったことをみんなにシェアしたい!」とがんばってみても、思い通りのイメージに仕上げるのはなかなか難しいもの。写真と文章の表現をワンランクアップさせるコツを探るべく、旅のワクワク感が伝わってくるような素敵な写真と文章を発信し続ける伊佐知美さんにお話を聞いてきました。

記事の最後には、伊佐さんが最近気になっている方にへのバトンもお預かりいたしました!

「旅」は最も心を動かされる存在。
写真と文章で想いを"可視化"する。

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ーこれまでに世界を2周し、訪れた国は延べ100か国以上!オンラインコミュニティ「#旅と写真と文章と」を主宰し、世界中を旅しながら取材執筆活動を行なっている伊佐さん。そのような活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

伊佐さん:旅と写真と文章、この3つは私の大好きなものです。私は自分が綺麗だと思ったものに心動かされて文章と写真で発信することが多いのですが、旅は地球のなかで私が心を動かされる要素の第1位なんです。だから旅好きが高じて写真と文章も自然な形で始めました。写真と文章は私のなかでセットになっていて、自分の気持ちの高ぶりやときめきを、可視化してくれるものだと思っています。

ー写真と文章、伊佐さんが描くみずみずしい旅の世界観には、どちらも欠かせないものなのですね。

伊佐さん:私の中ではどちらも双璧ですね。でも多分、軸は文章に置いている。文章と写真では伝えられる情報量が全然違うので、写真は私にとっての"拡声器"のような存在。文章だけでは伝わらない部分を写真に助けてもらっている感覚があります。

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写真との過ごし方が変化した語学留学。
魅力的な写真の秘訣は、込められたストーリー。

ー本格的に旅をするようになってから丸4年。昨年は語学留学で3つの国に行かれたということで、思い出の写真をWALL DECORにしていただきました。それぞれの国に2週間から長い所では1か月滞在していたということですが、撮る写真や気持ちに変化はありましたか?

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WALL DECOR/キャンバススクエアmini
2019年に語学留学で訪れた国々の写真。上からマルタ共和国、セブ島、スコットランド。生活をしながら現地の学校でリアルな英語を学んだそう。「キャンバスプリントは旅の何気ない写真をおしゃれに見せてくれますね。旅をするごとに1つずつ増やしてお家に飾るのも楽しそう!」(伊佐さん)


伊佐さん:実は、こんなに長く同じ場所に滞在するスタイルの旅は、とても珍しい。今までは長くても同じ街に数日から1週間程度の滞在だったので、撮る写真はもちろん、気持ちにも変化がたくさんありました。例えばこの写真(上の写真で伊佐さんが指しているもの)。マルタの世界遺産・バレッタの写真なのですが、実はこの風景の横には川があってシーバスが走っています。一般的にはそれらを入れて撮ることが多いんですが、私が撮影したのは万人が通るルートではない、裏道から見た写真なんですね。ひとつの場所に暮らすように長く滞在して、時間と心に余裕があったからこそ切り取ることができた風景かなと思います。

私が尊敬している方の一人である「HOTEL SHE,」を運営するL&G代表の龍崎さんは、よく「ホテルはライフスタイルを試着する場所」とおっしゃいますが、語学留学で過ごした時間はまさにそれでした。少し長めに旅をしながら、その土地のライフスタイルを試着した感じ。観光での滞在だとつい慌ただしくなりがちなのですが、その土地のスーパーで買い物をしたり洗濯をしたり、実際に暮らすことで見えてくる地元の人の様子や日常生活に根付いている場所など、日々のリズムの中にあるゆったりした楽しみを撮ることが増えましたね。

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ーどの写真もとっても素敵です。伊佐さんの写真は、先ほどのマルタの写真のお話にもあったように、「ただ観光地を撮りました」という感じではなく、思わず旅に出掛けたくなるような魅力がありますよね。具体的には、旅先でどんなものに出会ったときに「写真を撮りたい!」と感じますか?

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マチュピチュの玄関口 ペルー クスコ

伊佐さん:ミーハーなので観光地も一応行くんですけど、絶対に行くようにしているのは、やっぱり路地やスーパーマーケット、市場といったローカルの人しかいないような場所です。そこで生活している地元の人の姿も写真に残せるような場所は、心がときめくポイントですね。私は何気なくただ撮ったという写真はあまりなくて、必ず「文章が添えられるかどうか」を意識して撮っています。キャプションありきで撮る、というか。なぜかというと、どの写真にもストーリーがあると思うから。

あとは、「その街で一番高い場所」に行って写真を撮ることも多いです。見晴らしのいい場所が大好きなので。例えばこの写真は、ペルー・マチュピチュの玄関口の世界遺産の街・クスコ。旅好きなら一度は行きたい場所だと思うのですが、私が訪れたのは最初に旅を始めてから大分経った、つい2年前。行ってみたいという思いが強すぎて、実際に行ったら満足して死んじゃうんじゃないかと思っていて、残しておいたんです(笑)。なので、この写真は「ずっと行きたくて、でも行けなかった場所にやっと来られた。夢にまで見た場所」というストーリー、想いが凝縮した一枚です。

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映画『魔女の宅急便』のモデルになったと言われる、クロアチアのドブロヴニクでの1枚。「幼少時代、原稿を書きながら旅をするという小説家の村上春樹さんに憧れていて、世界1周目の前半にそういうスタイルでの働き方が初めて叶った場所なので、とても印象に残っています」(伊佐さん)

ときめきと"対話"する。
上達のコツは自分自身を知ること。

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ー伊佐さんは元々、写真や文章が好きだったと言うことですが、「旅は好きだけど写真や文章で表現するのは苦手...」という方もたくさんいると思います。そういった方のために、写真や文章による表現を上達させるためのアドバイスをいただきたいです!

伊佐さん:私も元々写真が上手いわけではなく、スマホ撮影から始めて物足りなくなってカメラに移行した人間なので偉そうなことは言えないのですが...、まずはたくさん写真を見て情報を蓄積して、自分でも実際にたくさん撮ってみると良いと思います。枚数を重ねないと自分が何を撮りたいのかもよく分からないし、それって結局は何に心が動いているのかも自覚できていない状態。ある程度撮ってみると、自分が旅先の何に魅力を感じているのかが分かってきます。撮りたい写真のイメージが描けるようになったら、あとは具現化する方法を学ぶだけ。「撮りたい!」と思ったものを撮れるようになると写真が楽しくなるはずです。最初はスマホでも良いのでたくさん撮ってみて、「良い!」と思える瞬間を見つけると、楽しいし上達の近道になると思います。

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もうひとつは、「いいな」と心が動いた場所では少し待ってみること。綺麗だな、好きだなと感じた理由を探して立ち止まってみるんです。例えばこの写真だと、写真の中央にいる人たちが写っているのといないのとでは写真のバランスが変わってくると思うんです。立ち止まったからこそ撮れた1枚。そういう風に心が動いた理由を見つけてからシャッターを切る癖をつけるのもおすすめです。

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旅の思い出を写真と文章で綴りPhotoZINEにまとめたもの。

20200330.jpg伊佐さんいわく「旅好きはおそらくここに辿り着く」と言う「somewhere(どこか)」と「here(今ここ)」と題した2冊組に。「『旅先の私』と『日常の私』の2つに分けて、それぞれ写真を選びました。どちらも自分で撮った写真なのに、心境の違いが現れていてとてもおもしろいものに仕上がっています」(伊佐さん)

文章については、私自身いろいろな書き方を試してきたのですが、「自分のため」に書くのがやっぱり一番だと思います。私はブログサービスのnoteを2014年から書き続けているのですが、tips系はほとんど書いていないし、旅ブロガーのような役立つ情報もあまり書いていません。誰かに伝えるのはもちろんすごく尊い感覚だとは思うのですが、せっかく自分のお金と時間を使って旅をするのだから、自分が楽しいと思ったことをまずは書き留めて、読んでくれた方から反応を多くもらえた部分を強みにしていくやり方のほうが、無理がなくて楽しいですよね!

ー最後に、伊佐さんの今後の目標や将来の展望について教えてください。

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伊佐さん:世界を飛び回っていたこの4年間は定住の地がなかったのですが、日本も世界もほぼ行き尽くして、気持ちに変化が出てきて、実は最近、家に住んでいるんです(笑)。もちろん旅が大好きというのはこれからも変わらないのですが、あまりにも非日常が日常になりすぎてしまって、最近は洗濯を干したりお花を愛でたり、そういった"日常"に目が向いています。

以前は、ときめきを外に探しに行って、世界のカラフルを集めていた。でも、たくさん旅をするうちに「自然の色彩って、日常にもあるな」ということに気が付いたんです。例えば色彩豊かなお花が昔から好きだったので、最近はお花屋さんのメディア関連などにも携わっていて、旅のおかげで仕事の幅も広がっています。これからも先を見据えながら私らしく歩んでいけたらと思っています。

伊佐知美さん、素敵なお話をありがとうございました!

リレー形式でつないでいく新連載がスタート!
伊佐さんからつながるバトンは...!?

「写真と、ちょっといい暮らし。」では、これまでも素敵な写真を撮っている方、写真から見える日常の一コマが魅力的な方など、たくさんの方々にお話を聞いてきました。そこでふと気になったのが、「出演者の方々はどんな方たちが気になっているのだろう?」ということ。

そこで、今回から、インタビュー出演者の方から次の出演者の方を推薦していただき、リレー形式につないでいくことにしました!今回お話を伺った伊佐さんが今気になる方は、Twitterに投稿される美しいお写真が気になる宵月絃(@__yoii_to)さん。

「タイムラインに流れてくる写真が素敵であたかかく、またお名前に「月」が入っている、撮影されているモチーフに「花」「自然」が多いこと、どんな方が、どんなことを思いながら撮影されているのだろう?と日に日に気になる度が増していったため。今回のお話をいただいて、一番にお名前が浮かびました」(伊佐さん)。

伊佐さんからのバトンをお預かりし、次回は宵月絃さんにお話を伺いたいと思います!記事は4月公開予定です。お楽しみに!



Photo by 土田凌
Writing by 大西マリコ

WALL DECOR/キャンバススクエアmini
サイズや質感のバリエーションが豊富で、お部屋の雰囲気に合わせてお気に入りの写真を飾ることができます。今回使用したのは、キャンバス地のカジュアルさと飾りやすい小さめサイズが人気のキャンバススクエアmini。1枚はもちろん、複数枚組み合わせて飾るのもオシャレです。
PhotoZINE
写真や言葉を“ZINE(=ハンドメイドの本・雑誌)”にできるサービス。レイアウトデザイン、サイズ、ページ数のバリエーションが豊富。めくりやすい紙なので、さながら本のような1冊に。自分オリジナルの写真集を気軽に作ることができるので、旅の思い出や日常の一コマをまとめるのにおすすめです。
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