暮らしに溶け込む写真のあり方を問う連載企画、わたしの「写真と、ちょっといい暮らし」。第3回は、日々の暮らし方やもの選びにもファンが多く、ファッションやライフスタイルの分野で活躍するイラストレーター、よしいちひろさん。

よしいさんが暮らすのは東京郊外の一戸建て。自然光がたっぷりと入るリビングルームは、白を基調としたファブリック、ウッドの家具や植物が散りばめられ、とても居心地がいい空間。

壁を彩るのはたくさんの家族写真、アート、息子さんの工作など。暮らしの中にある写真は「愛おしさを増幅させてくれるもの」だと語るよしいさん。写真の楽しみ方や、生活と豊かさについてなど、さまざまな問いに答えてくれました。

見るたびに何かを思い起こす、そんな写真を飾りたい

---- もともと写真を撮ることはお好きでしたか?

よしいさん:そうですね。世代的にも、ティーンの頃からずっとカメラは持ち歩いていました。父のお下がりだった一眼レフのフィルムカメラで、街角のちょっとしたかわいいものをスナップしたり。お花とか、顔に見えるネジとか(笑)、そういう人に見せるほどでもないようなものを、若いときはよく撮っていました。

---- 歳を重ねるにつれて、撮る写真も変わっていきますよね。

よしいさん:今はやっぱり家族の写真が多いですね。でも、携帯だとたくさん撮りすぎて、とても見きれない量になってきちゃって...。撮って残しているつもりでも、残せていないなと感じるんです。フィルムで1枚1枚撮っていた大事さと比べると、携帯でパシャパシャ撮っているのは、果たして写真なのかしらって思うくらい別ものです。瞬きみたいな。写真を残すには、やっぱりプリントすることも大事だと思います。

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---- よしいさんの部屋には家族の写真がたくさん飾ってありますね。欧米と違って、日本ではあまり家族写真を飾る文化がないと感じるので、とても素敵です。

よしいさん:家族の小さなスナップをいっぱい飾るというのに憧れがあって、子どもが生まれたことでだんだん増えていきましたね。今は90%以上が家族写真です。横浪修さんや濱田英明さんなど、フォトグラファーの方が撮ってくれたものもあります。

---- よしいさんが飾りたい、残したい、と感じるのはどんな写真ですか?

よしいさん:見るたびにそのときのことを思い出して、かわいかったなとか、何かしらの感情が湧きあがってくるような写真。とくに家族写真は、部屋に飾ることで愛おしさがどんどん増幅していくような気がします。でもそれだけじゃなくて、身近なものだからこそ、どこか引いているというか、距離感を感じるものが好きかもしれません。

家族を「作品」として写した写真集たち

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家族のスナップが収録された『JANE AND SERGE. A FAMILY ALBUM』

---- 普段、写真集を見たりすることもありますか?

よしいさん:本棚には造形作家とか、イラスト関連の本のほうがやっぱり多いですね。でも、夫が買ったものも含めて、好きな写真集もいくつかあります。

例えば『ECHOLILIA』は自閉症の息子さんの日頃の行動や儀式的に行っていることを切り取った写真集ですが、それらはアートのようで美しさに息を飲みます。それから『MILKY WAY』は、奥さんが授乳しているところをずっと撮っている写真集で、私の大好きな1冊。 自分も経験した、期待とかしんどさとかが、ないまぜになった当時の気持ちを思い出させてくれる。『JANE AND SERGE. A FAMILY ALBUM』は家族のスナップ集という感じなんですが、とにかくおしゃれで、見ていて楽しいです。

---- すごくパーソナルで、親密なものが多いですね。やはり、ご自身の体験との共通点を感じますか?

よしいさん:今はどうしても家族をテーマにしているものに、興味が湧きます。すごく身近な存在で、強く共感できるけど、作品として独立していてすごくきれい、そういったものに惹かれます。一歩引いた目線でというのは、自分が写真を撮るときにも心がけていることです。

写真やSNSを通して「客観的」になれる

---- よしいさんは自身のファッションやライフスタイルなど、SNSでの発信もとても魅力的です。SNSによって写真や暮らしに変化はありましたか?

よしいさん:SNSは、基本的には写真を見せたいというより、このコーディネイトを見せたいとか、子どもについて考えたこととか、自分の言いたいことを伝えるメディアという感覚なんです。でも、インスタグラムがきっかけとなって、自分自身を客観的に見れるというのはあると思います。今日ちょっと顔色が悪いなとか、部屋がごちゃごちゃしてるなとか(笑)、鏡を見ても気づかなかったことに気づいたり。

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---- 第三者目線で自分を見て、修正していけるのはいいですね。よしいさん自身が、SNSから暮らしのヒントを得たりすることもありますか?

よしいさん:SNSでも雑誌でも素敵だなって思ったものはどんどん取り入れています。その取捨選択が自分を作ると思っているから。特定の誰かの真似ばかりしていたらその人になってしまうけど、結局真似しきれない部分とかが合わさって、その人だけの個性になるんじゃないかなと思っています 。

---- ものを選ぶときは、どんなことを気にしますか?

よしいさん:本当に好きなものだけを買うようにしています。フライパンでも花瓶でも、いっぱい調べて、妥協はしない。それは高価なものというわけじゃなくて、自分に合うサイズとか、"らしさ"があるかとか、できるだけ応援したいと思う作り手から買うとか。ひとつひとつ大事に選んで、嫌なものがない空間で過ごしていると、やっぱり気持ちがいいです。

まず自分自身のケアをすることで、日々を豊かに

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---- そうやって選んだものに囲まれて暮らすだけで、ちょっと豊かになれる気がします。

よしいさん:自分のことをちゃんと気にかけて、機嫌よく過ごせるといいですよね。もの選びもそうですし、好きなものを食べていっぱい寝るとか、基本的なことも。自分のことって後回しにしがちだし、とくに日本人は一歩引くみたいな文化もあるから、おざなりにしてしまうんですよね。でも、もっと自分を大事にしていいと思うんです。

---- それこそ写真やアートを飾るとか、ちょっとしたことで暮らしは変わりますよね。

よしいさん:何かを飾ったり、選んだりすることも、自分はどういうものが好きなのかな?っていう対話ですよね。そうやって常に自分と対話することが、豊かな生活につながっていくように思います。心や身体を整えておくことで、生活の中にある小さな幸せを見逃さずにキャッチできる余裕が生まれてくる。

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---- 自分をケアすることが、家族のためにもなったり。

よしいさん:そうそう、そうなんですよね。コロナ禍で夫や息子と過ごす時間が増えて、私がずっとイライラしていたら、みんなが嫌な気分になりますからね。

「あなたのことが大切」と伝える1枚

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---- 今回、富士フイルムのWALL DECOR(ウォールデコ)を試していただきましたが、まず選んだお写真について教えてください。

よしいさん:1枚は、数ヶ月休みを取っていた時期に、子どもと2人きりでハワイに行ったときのもの。当時はまだ小さくて、3歳くらいだったかな。ホテルの部屋で、やっと寝てくれた!という瞬間の写真なんです(笑)。ほっとした気持ちとか、子どもの大変さとか、でも寝顔はかわいいなとか...色んな気持ちが混ざりながら撮りました。子どもの小ささとか、ハワイの光のきれいさとかも、すごく懐かしいです。

もう1枚は、夫と新婚旅行に行ったときに、ベルギーのジュ・ド・バル広場という大きな蚤の市をすぐそばのホテルから撮ったもの。私も夫もよくこの窓から外を見ていて、そういうことも思い出しますね。

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---- 写真を選ぶときに意識したことはありますか?

よしいさん:今回は大きい写真だったので、ちょっと選び方も変わりましたね。客観的に見れて、家族の温度を感じすぎないものにしたいなと思いました。そういうもののほうが、私たちも色々なことを思い浮かべられるから。

---- よしいさんが感じたWALL DECOR(ウォールデコ)の魅力は?

よしいさん:シンプルで部屋に馴染むので、クリーンな印象になって飾りやすいですよね。ライトグレーの縁(テープ)にしたことで、写真がすごくきれいに見える。自分の写真をこんなにちゃんと飾るのは初めての経験だったんですが、1枚で良い雰囲気が作れるのがいい感じ。こうして家族の写真を大きく飾ることで、「私たちはあなたのことを大事にしているんだよ」っていう気持ちも、きっと伝わるんじゃないかなと思います。

よしいちひろさん

1979年生まれ、兵庫県出身のイラストレーター。水彩を中心とした柔らかなタッチと洗練されたカラーリングが人気を集め、雑誌、書籍、広告などで幅広く活躍。自身のファッションやライフスタイルを伝えるSNSにも注目が集まっている。

Photo by 大西日和

Writing by 坂崎麻結

WALL DECOR(ウォールデコ)
お気に入りの写真をパネルにできるサービスWALL DECOR。どんな写真にもマッチするシンプルなデザインで、飾る場所も限定しません。よしいちひろさんは、白が貴重のおうちの雰囲気に合わせて、ギャラリーのライトグレーの縁(テープ)をセレクト。白い壁に馴染み、まさにギャラリーのような雰囲気に。
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