暮らしに溶け込む写真の価値を問う連載企画、わたしの「写真と、ちょっといい暮らし。」第4回は、Instagramで発信している"インテリアと暮らしの記録"が注目を集め、さまざまなメディアに登場しているaman0jackさん。

実験するように部屋作りを楽しんでいるというaman0jackさんが暮らすワンルームは、コンクリートの箱を思わせるまっさらな空間。そこにアンティーク雑貨や古道具、作家ものを中心としたデザイン性の高いプロダクトが美しく配置されています。

「部屋に朝の光が入ってきた時や、花がだんだんと枯れて、花びらが落ちている姿とか。そういうシーンを見ると、写真を撮りたくなるんです」と話してくれたaman0jackさん。同じ空間を撮り続けていてもどこかに新鮮さを感じるのは、そんな「暮らしの中にある小さな変化」を写しているからなのかもしれません。

普段からFUJIFILMのミラーレスデジタルカメラを使っているというaman0jackさんに、インテリアや暮らしのこと、写真を撮ることについて、ざっくばらんに語っていただきました。

蚤の市で出会ったアンティークが、すべてのきっかけ

2107_01_02.jpg

---- インテリアや空間作りに、最初に興味を持ったのはいつ頃でしたか?

aman0jackさん:学生時代の一人暮らしが最初のきっかけなので、18歳くらいだと思います。自由に部屋作りができる環境になってから、だんだん興味が出てきた感じですね。その時は今と違ってもっとカラフルで、漫画とか趣味のものが多いサブカルチャーっぽい部屋だったんですよ。

でも、20代になってからは海外で蚤の市に行ったりして、だんだんとアンティークのものに惹かれるようになっていきました。オランダやベルギーで出会った古いものたちがすごく魅力的で。その時は壁掛けのコーヒーミルなどを買った記憶があります。

---- アンティークのどういう面に惹かれたんでしょうか。

aman0jackさん:1点もののアンティークだと、やっぱり人と被らないところが魅力ですよね。もともと、幼少期におばあちゃんが骨董品を集めているのを見ていた影響もあるかもしれません。あと、建築系の大学で古民家の研究をしていたことも、すべて「古いものが好き」という部分で繋がっているのかなと思います。

逆に、新しくて機能的なものも好きですよ。たとえば、古い木箱とブリキの筒で簡易スピーカーのようなものを作って、中にAmazon Alexaを入れておいたり。コンクリートむき出しの部屋ですが、リノベーション前にあった古いタイルがキッチンに残っていて、それも気に入っています。新しいものと古いもの、どちらも楽しんでいる感じです。

2107_01_03.jpg自作した古い木箱とブリキの筒の簡易スピーカー。中にはAmazon Alexaが。

2107_01_04.jpg

---- ものを選ぶ時の基準みたいなものはありますか?

aman0jackさん:まずはデザインで選んでますね。最近買ったRussell HobbsのTケトルは、もっとコーヒーを淹れやすい注ぎ口だといいなとか、温度調節も本当は1度単位でやりたいな、とか。ちょっとした不満はあるんですけど、デザインを優先してこれにしました。人によって違うと思いますが、私の場合はまず見た目にこだわりたくて、その次に機能がついてくる。そういう感覚ですね。

足りない要素を補うため、DIYでオリジナリティを作る

---- 部屋作りにおいて、どんなことを意識していますか?

aman0jackさん:今の部屋に関しては、コンクリートむき出しなところが大きくて、無機質だからこそ空間が作りやすいんですよね。床の材質だったり、そういう基本的な部分にストレスがないっていうのはすごく大事だと思います。

その上で、余白を作って間をもたせること、同系色でまとめることで、空間にメリハリをつけたり、細々としたものは1箇所に集中させること、床にあまりものを置かないことで、管理しやすい部屋にしたりということは意識しています。

---- 自分の手でDIYしている部分も多いですよね。

2107_01_05.jpg

aman0jackさん撮影提供:脱衣所スペースをDIY

aman0jackさん:そうですね。脱衣ができる囲いスペースや、キッチンの横にある作業台、ベッドサイドのテーブルなどは自分で作ったものです。DIYをする時は、部屋の中の「足りない要素を補う」感覚です。でも、やっぱり作家さんや職人さんが作ったものと並ぶと、自分の雑さが気になってきてしまうというのはあって。最近は作ることよりも、集めるほうに興味が向いています。

2107_01_06.jpg集めたもののひとつ:山本彌さんの造形作家のキノコのオブジェ

実験を重ねることで、暮らしは良くなっていく

---- 現在はInstagramで2.8万人のフォロワーを持つaman0jackさんですが、最初に写真を撮って発信することを始めたのはいつ頃でしたか?

aman0jackさん:写真を撮ること自体は、大学に入った時が最初だと思います。何か表現に関係する趣味をやりたいと思っていた時に、絵や文章よりも身近に感じたのが写真でした。その頃、ちょうどインテリア実例共有サイトで色々な人の部屋を見るのが好きだったので、その延長で自分の部屋をアップし始めました。

---- インテリア実例共有サイトやInstagramでの発信を始めたことで、生活に変化などはありましたか?

aman0jackさん:何かを教えあったり、交流したり、そういう経験は大きかったかもしれないですね。SNSがきっかけで知り合った方や取材に来てくださった方と、ラジオ形式でインスタライブをやったり。構図や見え方についてより考えるようになったことで、写真を撮ること自体も楽しくなっていきましたね。

2107_01_07.jpg

aman0jackさん撮影提供

今の部屋に引っ越してからは色々なアイデアを試せるようになって、更新頻度もだんだん上がっていきました。実験のような感覚で空間作りをしているので、SNSで反応をもらえるというのも良かったことです。それに、見られているという意識があると部屋もきれいに保つようになります(笑)。

---- 日常のどんな瞬間に、写真を撮りたくなりますか?

aman0jackさん:部屋の写真ばかり撮っているので、基本的には変化が少ないんですよ。だから、部屋に飾っている花や植物が少しずつ枯れていく姿とかを見ると、撮りたくなりますね。無機質な部屋なので、植物以外にも標本だったりウミウチワだったり、自然のものを置いて空間に変化をもたせています。

惹かれるのは、静かな"変化"を感じる写真

2107_01_08.jpg

---- 今回、富士フイルムの『WALL DECOR(ウォールデコ)』を試していただきましたが、まず選んだお写真について教えてください。

aman0jackさん:2枚とも、蚤の市で買ったものを静物画のように並べて撮っています。ガラス、陶器製のビー玉、小さな木皿とか、そういうものですね。この部屋の雰囲気だと、風景やポートレートよりも絵に近い写真がいいかなと思って。

イタリアのアーティスト、ルイジ・ギッリの『写真講義』の表紙や、Instagramで見つけたフォトグラファーのLuis Garvanの写真をアイデアにしました。コンクリートの壁をバックに自然光で撮ったんですが、影の感じがけっこう気に入ってます。

2107_01_09.jpg

FUJIFILM X-S10 を愛用。

---- フィルムで撮ったようにも見えますが、デジタルですか?

aman0jackさん:デジタルです。それこそ最近発売されたFUJIFILMの『X-S10』を使っています。『XーT4』と迷ったんですけど、機能的に大きく変わらず、よりコンパクトな『X-S10』にしました。写真の撮り方を参考にしたいなと思う人のカメラを見ると、圧倒的にFUJIFILMの人が多くて。フィルムシミュレーションで簡単に色味を調整できるのも大きな決め手でしたね。

---- aman0jackさんが感じた、『WALL DECOR(ウォールデコ)』の魅力は?

aman0jackさん:私が今回選んだのは、マットな台紙と木製パネルのギャラリータイプ。余白もしっかりあるところが良かったです。実際に暮らしの中にあると、目に入ることも多いし、愛着がわいてきますね。

ビー玉を写している縦の写真のほうは、言い方がちょっと変かもしれませんが、神棚のような空間の一角に飾ってみました。一日の終わりに、気持ちをリセットするような感覚になれる場所なので、ちょうどいいかなと思って。

2107_01_10.jpg

---- 写真を撮る時、技術的・感覚的にどんなことを意識しますか?

aman0jackさん:私はプロのカメラマンではないので、技術的に気にしているのは本当に初歩的なことですね。ごちゃごちゃしすぎないように余白のバランスを意識したり、水平垂直、三分割とか、そういう基本のところだけ。

感覚的なことだと、やっぱり「変化」みたいなものが見て取れる写真が好きです。部屋に朝の日の光が入ってきた時とか、花が枯れて、花びらが落ちているシーンとか。そういう時は構図よりも、どうやったらより伝わるか、きれいに写せるかっていうことを考えています。そういう変化がうまく撮れた時は、やっぱり嬉しいですね。

aman0jackさん

大学で建築を学び、就職を機に都内で一人暮らしを始める。2015年頃から、インテリア実例共有サイトやInstagramを通して空間作りと暮らしの記録をスタート。蚤の市で出会ったアンティーク、デザイン性の高いプロダクトなどを取り入れたインテリアが人気を集め、さまざまなメディアに登場。現在も、「狭小アパートメント暮らしの実験」を続けている。

Photo by 大西日和

Writing by 坂崎麻結

WALL DECOR(ウォールデコ)
お気に入りの写真をパネルにできるサービスWALL DECOR。どんな写真にもマッチするシンプルなデザインで、飾る場所も限定しません。aman0jackさんは、コンクリートに囲まれたお部屋の雰囲気に合わせて、ギャラリーのマット仕上げをセレクト。アンティーク雑貨を写した写真とも相まって、まるで絵画のような作品に。
この記事をシェアする

New
最新の記事