フォトグラファーとして、モデルとして、これまで多くの雑誌や広告で活動してきたMIKI*さん。愛用するオールドカメラで撮った旅の写真や、日々の暮らしを記録するテーブルフォトなど、彼女の作品にはたくさんのファンがいます。

MIKI*さんが写真を撮りたくなるのは、思わぬ出会いによって「心のスイッチ」が入ったとき。旅先や日常で巡り会う"美しい瞬間"を、その背景にある物語ごと写していくような写真たちは、自然と見る人の心を緩ませてくれます。

旅をきっかけに写真の世界へ入っていったというMIKI*さんに聞く「旅と写真のストーリー」。前編では、カメラを通して経験したさまざまな出会い、そして自分自身の変化や表現方法など、写真についてたっぷり語っていただきました。

運命的な出会いをくれた旅とオールドカメラ

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---- 写真をはじめたきっかけはありますか?

MIKI*さん:沢木耕太郎さんの『深夜特急』に魅了されて、20代半ばくらいからバックパックで旅をするようになったんです。語学力は全然なかったけれど、若かったしチャレンジャーだったから、ヨーロッパをメインに列車で旅をしていました。そのなかで、自然と「写真を残したい」という気持ちが生まれて、知り合いのカメラマンさんに中古のフィルムカメラを一緒に選んでもらったのがきっかけでした。

---- それからは、フィルムで撮影されるようになったんですね。

MIKI*さん:最初は35ミリフィルムのカメラで旅の写真を撮りはじめました。ハンガリーのブダペストに行ったとき、天気も悪くて、なんだか写真のスイッチが入らない日があったんです。憂鬱な気分で歩いていたら、突然目の前に犬を連れたおばあさんが現れて。その様子がとても素敵だったので、思い切って写真を撮らせてもらいました。帰国後すぐに現像をして、その1枚を見たとき、何か運命的なものを感じて。「こんなに素敵な出会いを切り取ることができるなら、やっぱり旅の写真を残したい」と改めて思ったんです。あの写真がなかったら写真は続けていなかっただろうなって、今でも思い出す1枚ですね。

---- 素敵なエピソードですね。

MIKI*さん:その写真を当時あった投稿型の写真共有サービスにアップしたら、「その日の1枚」で1位に選ばれたんです。当時やっていた「Flickr」でもその写真がピックアップされて、「自分の写真を見てくれる人、感じてくれる人がどこかにいるんだな」と知ることができたのも嬉しかったですね。

夫との出会いも写真でした。私とは対照的に風景をモノクロで美しく撮るのが印象的で。写真展で声をかけてくれたことや、彼が私の大好きなオールドカメラを持っていたこともあって、今思えば運命的なご縁だったような気がします(笑)。

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ダイニングの横に飾られている、ご主人が撮影された1枚

---- 写真を通して、人生を変えるような出会いが続いたんですね。

MIKI*さん:そうなんです。その後、夫が私の誕生日にそのオールドカメラをプレゼントしてくれて、より深く写真を楽しめるようになっていきました。これをきっかけに私の人生が変わって、2008年頃からずっとそのカメラで写真を撮り続けています。

やっぱり私はフィルム独特の描写が大好きなんです。富士フイルムさんのリバーサルフィルム「プロビア」や「ベルビア」などもよく旅に持っていきました。発色が本当に綺麗ですし、デジタルにはない奥ゆかしさや、趣に惹かれるんです。

---- 普段は、デジタルとフィルムはどんな風に使い分けていますか?

MIKI*さん:旅先で撮る風景やポートレートはできるだけフィルムで、食べ物や料理など美味しい瞬間はデジタルで、という使い分けはありますね。フォトグラファーとして仕事をするときは、必ず両方持っていくようにしています。

やっぱり二眼レフの古いフィルムカメラって急にシャッターが切れなくなることも多くて、以前ファッション撮影をしたときは、1枚目でシャッターが壊れちゃったんですよ。そのときは予備のデジタルカメラでなんとか撮りきりました(笑)。

「写真」を「仕事」にするということ

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旅とライフスタイルの記録を一冊の写真集『Rollei Life』

---- 旅の記録としてはじめた写真が「仕事」になっていくまでは、どんな経緯だったのでしょうか。

MIKI*さん:「Flickr」に写真をアップしていたこともあって、最初は海外からのオファーが多かったんです。ドイツのメーカーさんから商用に使わせてほしいと連絡があったり、海外雑誌から掲載の依頼が来たり。ただ、私は自分の楽しみとしてはじめた写真を仕事にする気はなくて、できればしたくないとまで思っていました。

でも、あるとき尊敬する2人の女性に同じタイミングで「写真を仕事にしなさい」と言われたんです。1人はファッション業界、もう1人はフード関係の仕事をしている方だったんですが、「あなたのライフスタイルをちゃんと活かして、カメラを仕事にした方がいい」って。こんな素敵な人たちがそう言ってくれるということは、これも何かの縁なのかもしれないなと、背中を押されたような感覚でした。

---- それがターニングポイントになったんですね。

MIKI*さん:そうですね。そのファッション業界の彼女がルックブックの撮影を依頼してくれて、何もわからない状態から「好きなように撮って」と任せてくださった。本当に手探りで緊張しましたけど、自分の写真がレイアウトされて1冊になっていくのを見たとき、すごく感動して。写真を仕事にするのもいいかもしれないと思えたんです。それからは、だんだんといろんな依頼が来るようになっていきましたね。

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---- 仕事として撮るようになってからは、表現方法に変化はありましたか?

MIKI*さん:自分自身のぶれない直感で写真を撮っていく、という基本的なことは変えずにいます。あまり頭で考えすぎると、私はうまく撮れなくなっちゃうんです。だからできない仕事もたくさんあるし、ライティングを組んできっちり撮るようなものは、スタジオでしっかり勉強した人のほうがいい。私はずっと旅で感じてきたものを写真に撮ってきたので、それを気に入ってもらえて、「MIKI*さんのスタイルで、いつものカラーにしてほしい」と言ってくださる方が多いですね。

---- 技術的なことだけじゃなく、感性が求められているんですね。

MIKI*さん:海外の人からもよく「どうやって撮っているの?」ってDMをもらうんですけど、私は写真にすごく詳しいわけじゃないから、わりと感覚的に撮っています。だから失敗も多いです。ブローニーフィルムの12枚のうち1枚でもいい写真があれば、それだけで嬉しい。その1枚が、私にとって貴重な旅の思い出になるんです。

さまざまな経験が、自分の感覚を磨いてくれる

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---- 写真を撮るとき、どんなことを意識しますか?

MIKI*さん:これを撮ろうとか、こう撮りたいとか、最初から目的がある写真を私は撮らないんです。本当に直感で、心のスイッチが入った瞬間に気づいたら勝手にカメラを構えている。だから丸1日歩いて、1枚も撮れなかったっていうときも全然ありますよ。それが私のスタイルで、撮るものを決めてそこに向かうような旅はしないし、突然やってくるその瞬間を大事にしたいんです。

---- モデルとしてのお仕事も長くされていますが、撮る側と撮られる側どちらも経験していることが、どのように写真に生きていますか。

MIKI*さん:何をするにしても、美しいとか、美味しいと感じるものに関しては、常に意識してアンテナを張ってきたと思います。モデルの仕事でどこかへ行くときも、自分自身がそういうものを吸収できたからこそ、頑張ることができましたし。私にとっては旅先で見て、触れてきたことが、フォトグラファーをするうえでも、モデルをするうえでも大切なんですよね。人生のサプリメントというか......。旅がなかったら写真も撮ってないし、やっぱり私の人生のなかで「旅」というワードがすごく大きいのかなって。

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---- これまで経験されてきたことが、自然と繋がっているんですね。

MIKI*さん:部屋に写真を飾るとき、最初はモノクロのシンプルなテイストが多かったんです。でも、夫と出会って一緒に旅をするなかで、だんだん色鮮やかなものに変化していきました。旅先でスイッチが入る瞬間っていつだろうと考えると、やっぱり「彩り」なんですよね。空の青さとか、風景の緑、人の肌の色、衣服や雑貨の赤、そういう色に心が反応して写真を撮っているのかもしれません。旅先で感じた彩りを日々の暮らしのなかで眺めていると、なんだかほっとして、心が落ち着くんです。

"好きなもので暮らしを飾る"という幸せ

---- 今回、富士フイルムのWALL DECOR(ウォールデコ)を試していただきましたが、まず選んだお写真について教えてください。

MIKI*さん:1枚は、イタリアのトスカーナにあるサン・ジミニャーノという小さい村の写真。もう1枚は、スペインのバスクに行ったときに撮った、おじいちゃんとおばあちゃんの後ろ姿です。私はこの肩を組んでいる2人の写真が大好き。私自身、旅先では誰とでもハグしちゃうので、今はそれができなくて心が痛みます。また自由に旅ができるようになったら、こんな風にぎゅっとしたいですね(笑)。

どちらの写真にも共通しているのは、食べ物がすごく美味しい旅だったこと。食べることが大好きなので、夫と「コロナ禍が終わったらどこに行きたい?」と話すと、やっぱりスペインやフランスのバスク地方、イタリアの田舎がいいねという話になるんです。なので今回は、そんな旅のイメージを膨らませてくれる写真を選びました。

---- ウォールデコを使用した感想はいかがですか?

MIKI*さん:実は、ウォールデコはずっと作りたいなと思っていたんです。写真を飾るときってフレームに入れることが多いじゃないですか。でもキャンバスタイプだと、絵画のような雰囲気になるのが素敵だなと思っていて。

だから、今回ウォールデコでキャンバスタイプがあると知って、もう即決でした。小さいものだと可愛くて飾りやすいし、お友達へのちょっとしたプレゼントにもいいですね。何枚か連作で並べても素敵だし、インテリアとしての自由度もあって、すごく気に入りました。色の出方もいいし、たくさんの人におすすめしたい。私もあとでまた追加で発注しようと思っています(笑)。

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---- MIKI*さんは、写真を飾ることで生活にどんな影響を感じますか?

MIKI*さん:私は暮らしのなかに、写真だったり器だったり、好きなものをいっぱい置きたいっていう気持ちがあるんですよ。好きなものに囲まれて生活していると、ちょっと一息ついてお茶を飲む時間だけでも、本当に幸せでしょう? どこを見ても好きなものばかり、そんな暮らしが一番落ち着くし、いつも温かい気持ちにさせてくれるんです。

後編では、旅のエピソードや、初めての写真集のこと、暮らしのこだわりなど、MIKI*さんのこれまでのストーリーをさらにお伺いしていきます。

MIKI*さん

20代の頃からフィルムカメラで旅の写真を撮りはじめ、ドイツ製のオールドカメラで写した作品と、旅の思い出を綴った文章がSNSやブログで人気を集める。2018年には10年間にわたり撮影した3874枚の中から、62枚の写真を選び言葉を添えた写真集『Rollei Life』を出版。現在もフォトグラファーとして、また自身もモデルとして広告や雑誌などで活躍中。

Photo by 大童鉄平

Writing by 坂崎麻結

WALL DECOR(ウォールデコ)
お気に入りの写真をパネルにできるサービスWALL DECOR。どんな写真にもマッチするシンプルなデザインで、飾る場所も限定しません。MIKI*さんは、以前から気になっていたというキャンバスタイプをセレクト。絵画作品のような仕上がりになり、お部屋の素敵なインテリアともよくマッチしています。
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