繊細にカットされたフルーツや、あえてラフに盛られたクリームがまるで絵本から飛び出してきたかのように愛らしい「BAKE BATON(ベイクバトン)」のお菓子たちは、とてもフォトジェニック。

「BAKE BATON」は、オーナーの加藤さんがご自宅で土日だけ開いている、少人数制の焼き菓子教室です。季節のフルーツなどを使い、毎月メニューが変わるという洗練された見た目のお菓子はどれも目を惹き、教室はかれこれ8年も続いているのだとか。そんな加藤さんが日々更新するInstagramからは、 "日常の中にある小さな特別" を切り取る、加藤さんのあたたかな視線が感じられる気がします。

前編では、加藤さんがBAKE BATONを始めたきっかけや、普段撮影しているお菓子の写真へのこだわりを尋ねました。

自分の楽しみのために始めた、副業でのお菓子教室

2312_02_02.jpg

----どうして週末だけの焼き菓子教室を始めたのでしょうか?

加藤さん:20代の頃にパン屋やイタリアンレストラン、そしてカフェの立ち上げなど食にまつわる仕事を担当し、その時に私が作る製菓を喜んでもらえるという経験をしました。イタリアンレストランでも「お菓子作りが向いている」と言っていただき、ドルチェを担当していたんです。

独立しようかとも思いましたが、自分のお店を持つのはリスクが高いと感じていましたし、お菓子作りが大好きだからこそ、何も背負わず自分が楽しめる環境でやりたいという想いが強くて。

そして落ち着いたところが、平日は会社員として企業に勤め、土日に「BAKE BATON」の活動をするという働き方。今でもこの働き方を続けているため、ワークショップの開催は土日のみにしています。

2312_02_03.jpg

整理整頓され、こだわりの器具や食器がすっきりと並ぶキッチン

家に帰って箱を開けた瞬間に、気持ちが明るくなるケーキを

2312_02_04.jpg

----副業で毎月新しいレシピを考えるのは大変だと思います。教室で提供するお菓子のレシピを考えるときは、どんなことを意識していますか?

加藤さん:まず、2時間〜2時間半で完成させないといけないので、時間内に作れるレシピであることが条件です。

「BAKE BATON」では作ったケーキを箱に入れて持って帰っていただきます。なので、初めての方でも作りやすいこと、持ち帰りやすいこと、それが叶うデコレーションはどんなものだろうかと毎度頭を悩ませながら工夫しているんです。

そして何よりも、デコレーションがステキであること。作る時間もお客さまにとって楽しいものであって欲しいですが、家に帰ってから箱を開けてケーキを見た瞬間に、気持ちが明るくなったらうれしいなと思っています。

2312_02_05.jpg

リールでは、BAKE BATONさんにキャロットケーキのレシピを教えていただきました

----色味を抑えたデコレーションがとても洗練された雰囲気で、見ているだけでも気分が上がります。味にはどんなこだわりがありますか?

加藤さん:実は私自身はあまり甘いものが好きではないので、甘すぎないものを目指しています。

柑橘系のフルーツやベリーを使ってさっぱり仕上げたり、軽いクリームを使ったりなど工夫をしているんです。

他にもせっかく私が作るのだから、「BAKE BATON」だからこその味にしたいと考えています。例えばキャロットケーキであれば、味に深みを加えるためにライ麦全粒粉を加えているんです。他のお菓子でも必ず何か工夫をするように心がけています。

お菓子作りは、何も考えず無心になれる大切な時間

2312_02_06.jpg

----加藤さんご自身がお菓子作りを楽しく感じる瞬間はどんな時ですか?

加藤さん:お菓子を作っている間は他のことを何も考えず、無心になることができます。その時間が本当に好きなんですよ。思い通りの味になかなか仕上がらなくて苦しい時もありますが、何度もトライして理想通りにできた時の達成感は何度味わってもたまらないものがあります。

あとは、BAKE BATONを始める前から、友だちや家族によくお菓子をあげているのですが、作ったものを食べてくれた人が喜ぶ姿を見る瞬間がうれしいですね。

2312_02_07.jpg

----お客さまには、お菓子作りを通してどんなことを感じて欲しいですか?

加藤さん:教室に参加してくださる方々には、お菓子を作れるようになって欲しいとか、上手になって欲しいとかは考えていません。ただ私のワークショップを楽しんでもらえたら。

リピーターの方が多いので、顔見知りの方と初めての方が混ざり合い、いつも和気あいあいとおしゃべりしながら作業をしています。お菓子作りをして無心になって、楽しくおしゃべりをして、日々のストレスや悩み事を忘れてもらえたらうれしいなと思います。

カメラを通して俯瞰すると見えてくる、日常の特別さ

2312_02_08.jpg「BAKE BATON」の世界観が詰め込まれたInstagram

----Instagramにアップされている写真からも、お菓子への想いが伝わってきます。撮影の際に、意識していることはありますか?

加藤さん:あまり可愛らしくなりすぎないように、意識しています。例えば食べ物は暖色の方がおいしく見えると言われていますが、あえてホワイトバランスを若干青寄りにしているんです。そうすると少しクールな雰囲気に見えますよね。あとは光が綺麗な写真が好きなので、自然光を大切にして撮影しています。

その他にもスタイリングを決め過ぎないようにする、ということを心がけていますね。仕事上は完成図を撮影しますが、本当は食べかけや食べた後など、日常の瞬間を切り取ったような何気なさのある写真が好きです。

----今回作成していただいたWALL DECORの写真も、普段からよく撮られている手作りのケーキですね。

加藤さん:りんごとカルダモンのケーキを選びました。お菓子の写真をプリントしたことはなかったので、「どんな風になるんだろう」と見てみたくて。

ここまで大きくしたのも初めてですが、ケーキの生地やお皿などの質感がすごくきれいに出ていて驚きました。元のデータよりも写真のクオリティ自体が上がったのでは?と思うほど!

普段からお菓子の写真はたくさん撮っていますが、こうしてカタチにしてみると新鮮だし、これだけきれいに仕上がって届くと、普段のケーキが特別なものになりますね。

日常に埋もれているものを"特別" に感じさせてくれるのは、一歩引いたところから物事を捉えられる、写真というツールだからこその良さですよね。さらにプリントしてカタチにすることで、特別感が高まるような気がします。

2312_02_10.jpg

----このWALL DECORを飾ったら、教室のお客さまの反応も気になりますね。

加藤さん:お菓子教室では、空間も一緒に楽しんでいただきたいと思っているんです。みんなで使うテーブルがあるところの壁に飾っても良いかもしれないですね。

お菓子を作っているときにこのケーキの写真が目に入ったら、教室で過ごす時間を、より特別なものに感じてもらえるかなと思います。

後編では、古道具と瑞々しいグリーンが洗練された雰囲気を作り出しているインテリアへのこだわりや、日頃から使っているカメラ、そして「何気ない瞬間を切り取るのが好き」と語る加藤さんの写真への想いについて伺います。

BAKE BATON 加藤さん(@b__baton

パン屋やイタリアンレストラン、カフェの立ち上げなど食にまつわる仕事を経験。自身が作った製菓を喜んでもらえたことをきっかけに会社員として働きながら、土日のみの少人数制のお菓子教室「BAKE BATON」を開催。ワークショップは2ヶ月先まで埋まるほどの人気。キャンセル待ちは随時受付中。

Writing by 齋藤 萌

Photo by 清家 翔世

WALL DECOR(ウォールデコ)
お気に入りの写真をパネルにできるサービスWALL DECOR。どんな写真にもマッチするシンプルなデザインで、飾る場所も限定しません。加藤さんは、「ギャラリータイプ」のテープはグレー、マットは白で作成。真珠のように色鮮やかな輝きをもつパール仕上げにすることで、豊かな質感に。
この記事をシェアする

New
最新の記事