日々、実感する子どもの成長の早さ。日毎に表情が豊かになり、寝返り、立っち、あんよ...できることがどんどん増えて、子どもの世界は広がっていきます。そんなわが子の愛らしい姿を写真に収めようとカメラを手に取ってみたものの、「自然体の雰囲気で撮れない」「カメラを向けると子どもの表情が硬くなる」などの悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
今回は二児の母でフォトグラファーの沼山かおりさんに、子どもの写真を撮るときのコツや、構図のポイントを教えてもらいました。
遊びやコミュニケーションの中で自然に出る「可愛い」をキャッチ
―七五三などの記念日や、子どもとの日常風景の撮影を多く手がけている沼山さんの写真は、子どもの生き生きとした表情や、何気ない仕草がとても魅力的です。自然な雰囲気で撮影するためのコツはありますか?
沼山さん:5歳くらいの年齢になると「笑って」とリクエストすれば笑ってくれるんですが、より自然な表情を収めるために「この声なーんだ?『ワンワン!』」とか、「赤い色の野菜、なーんだ?」などのクイズを出して、お子さんが笑顔で答えてくれた瞬間にシャッターを切ることが多いです。
0〜1歳の赤ちゃんの場合は、名前を呼びかけたり、おもちゃで興味を引いたりすることがほとんどですが、2歳くらいになってくるとコミュニケーションが取れるので、遊びを交えての撮影がおすすめですよ。
以前、Twitterのフォロワーさんからも「わが子の可愛い仕草や表情をカメラに収めたくても、子どもがカメラを意識してしまってうまくいかない」というコメントをいただいたことがありました。
「さあ、撮るぞ!」と親が勇んでしまうと、その緊張感が子どもにも伝わって表情や動きが硬くなってしまうことが多いです。自然な表情や仕草を撮りたいなら「遊びの延長で撮る」ことだと思います。大事なのは子どもから自然に出た「かわいい」を逃さないこと。ずっとカメラを向けているよりは、一緒に遊んだり、コミュニケーションを取ったりしながら、傍にカメラを置いておいて、「いいな」「かわいいな」と心が動いた瞬間にレンズを向ける...くらいの気構えがいいのではないでしょうか。
写す位置と角度を工夫しながら、「生活感」も背景に写す
―家庭での「日常風景」の撮影依頼も多いそうですね。自宅で子どもを撮影するとき、どんなことを意識すれば良いのでしょうか。
沼山さん:「おしゃれさ」を重視するなら、白い壁にガーランドなどを飾って撮ると雰囲気良く撮れますが、私はあえて「生活感」を入れるのも良いと思っています。
私は自分の子どもを被写体にしてシャッターを切る時、10年後、20年後を想像することがあります。子育てがひと段落した時にどんな気持ちでこの写真を見るんだろうって。きっとこの忙しい時間や散らかった部屋も含めて、懐かしく、愛おしく思えるはず。だから仕事で「日常風景の撮影」を依頼されたときも、お客さんには「散らかったままでいいですよ」と伝えています。おもちゃが散乱していても、洗濯物が出しっ放しでも、ご飯粒が散らばっていてもいいんです。それが「今」という時間なんですよね。
きれいに片付けられた部屋で飾り付けをして撮るのって、スタジオで撮る記念日写真と同じ。自宅で撮るなら、「子育て中」というその時間と空間ごとカメラに収めてほしいです。
―「片付けなくていい」というアドバイスは心強いですね!でも片付けられていない部屋での撮影はなかなか難しそう...。沼山さんの撮る写真は洗濯物ですら、演出の一部として素敵に写っているから不思議です。
沼山さん:散らかっていていいのですが、「あえてファインダーに入れる生活感」と「写っちゃって残念な生活感」は少し違います。
「写っちゃって残念な生活感」を改善するには、自分が動くことが大切!背景にある「生活感」が写真に写りこむ時の位置や高さを変えるだけで、素敵な雰囲気の写真が撮れるはずです。お子さんを撮影しているときは、どうしてもわが子のかわいい笑顔に注目してしまって背景をおろそかにしてしまうという人も多いはず。広い目で空間を捉えて、さまざまな位置と角度からの撮影を試してみてください。
照明はオフにして自然光で。光の差し込む向きに気をつける
―自宅での撮影のとき、背景以外で気をつけるべきポイントはありますか?
沼山さん:蛍光灯は色かぶりをするので、肌の色が汚く写ってしまうことも。昼間などで光量が足りている場合は、室内の照明を消して、自然光で撮るのがいいと思います。また、光に対して子どもを正面に置いて「順光」で撮るか、横から光が当たるように「サイド光」で撮ると、肌や表情がきれいに写ります。肌や服の陰影を柔らかくしたいなら、レースカーテンを引いておくと、光を拡散してくれるのでおすすめですよ。
「覗き見」の構図と、「母性」を感じる斜め45度上からの角度
―子どもを撮影するときのおすすめの構図はありますか?
沼山さん:扉をファインダーの1/3くらい入れて撮る構図は、撮影者が介在しない「子どもだけの空間」を写すことができます。子どもたちだけで遊んでいるのを、こっそり覗き見をしているような感覚ですね。こちらに気にせず遊びに集中しているわが子の姿が撮れますよ。
斜め45度上から撮るのもおすすめです。この角度って、実は「授乳中のお母さんが子どもを見ているときの角度」なんです。子どもが生まれてからずっと見てきた母親の目線なので、もっとも母性を感じる角度なのではないでしょうか。実際にその角度で見てみてください。きっと「かわいい、愛おしい」と思えるはずですよ!
―具体的な構図や撮影時のアドバイス、とても参考になりました!大勢で集まる機会の多い年末年始に、さっそく実践したいと思います。素敵な写真が撮れたら、プリントして部屋に飾ってみるのも◎。今の時期なら子どもの写真を使った年賀状を作るのも良さそうですよね。
沼山さん、素敵なお話をありがとうございました!
沼山かおりさん
1982年東京生まれ。フォトグラファー。2013年に独立し「CuiCui photo works」を立ち上げ、ベビー、キッズのアニバーサリーや日常風景を中心に撮影を手がける。
Photo by 土田凌
Writing by 佐藤有香
Main visual by 沼山かおり