旅の写真を撮りはじめたことをきっかけに、メディアや広告での撮影、写真集の出版など、フォトグラファーとして活躍を続けてきたMIKI*さん。1台のオールドカメラ、そしてさまざまな人との出会いが、彼女を写真の世界に導いてくれたといいます。
写真をはじめた頃から、仕事になるまでのストーリーを振り返っていただいた前編。後編では、記憶に残る旅のエピソード、初めての写真集『Rollei Life』のこと、暮らしのこだわりなど、MIKI*さんが大切にしてきたさまざまな"出会い"をさらに紐解いていきます。
海外の田舎町に生きる、美しい風景と人に惹かれて
---- 前編では「旅」がMIKI*さんの写真に大きな影響を与えてきたと伺いました。これまでに、とくに印象に残っている旅先はありますか?
MIKI*さん:私は旅がすごく好きだから、ここが一番っていうのは決められないんですよね。でも、「また行きたいな」と思うのは、ウォールデコの写真を撮った、スペインとフランスのバスク地方かな。山と海それぞれの景色があって、食べものが美味しくて、人が穏やかで。私、田舎町がすごく好きなんです。フランスに行ってもパリとか中心地は旅の終わりに数日ステイするだけで、田舎のほうでゆったりとした時間を過ごすことが多いですね。
---- たしかにMIKI*さんの写真には、街というより路地や自然が多いですよね。
MIKI*さん:そうですね、写真のスイッチが入るのは私の場合、田舎町のほうが圧倒的に多い気がします。普段仕事で慌ただしくしているから、旅ではゆっくり、のんびりできることが最大の楽しみ。田舎のお母さんのごはんを食べたり、乗馬をしたり、その土地で暮らす温かい人たちと触れ合う時間を楽しんでいます。イタリアやフランス、スペインやモロッコ、ポルトガル、チェコ、スコットランド、クロアチア、スロヴェニア、タイのチェンマイなど。旅した国を上げるとキリがないくらい、たくさんの国で写真を撮ってきました。
---- 旅先で写真を撮りたくなるのは、どういう瞬間ですか?
MIKI*さん:やっぱり美しい風景や、人に出会ったときですね。ちょっとしたハプニングやトラブルから、ドラマティックな出来事が起こることも多いんです。スペインのフリヒリアナっていう小さな村をバスで旅していたとき、冷房でお腹が痛くなってしまって。そうしたら、同じバスに乗っていたおばあちゃんが私にキャンディをぽんって投げてくれたんですよ。それだけで、ものすごくホッとすることができた。
そのあと無事に目的地に着いて旅を続けていたら、そのおばあちゃんがたまたま前から歩いてきたんです。「さっきはありがとう、もう大丈夫!」って感謝を伝えたら喜んでくれて。素敵な出会いを残したくて、彼女に写真を撮らせてほしいとお願いしたんです。そうしたら「私の好きなマリア様の前で撮って」と。露出がうまくいかなくて写真としてはあまり上手に撮れなかったけれど(笑)、私にとって忘れられない1枚になりました。
---- そういう瞬間って、急にやってくるんですよね。
MIKI*さん:そうなんです。だから夫と旅をしているときも、私の写真スイッチが急に入ってしまうと気づいたら200メートルくらい離れてしまっていたり(笑)。道で写真を撮っているときも、お店で出会った人と1時間くらい話し込んじゃうこともあるけど、夫はずっと見守って待っていてくれる。家族がそういう人じゃなかったら私のスイッチも入らなくなってしまうと思うから、好きなように撮らせてくれることが嬉しいですね。
長い時間をかけて編んだ、宝物のような写真集
---- MIKI*さんが旅先で撮りためた写真は、1冊の本になっています。写真をプリントしたり、写真集にしたり、ひとつの「モノ」にするときに意識されることはありますか。
MIKI*さん:写真集に関しては、表紙の布張りから文字の色まで、私のこだわりを1冊に詰め込んでいます。印刷は北海道でしたんですが、布のサンプルを何度も持ってきてもらったり、紙や文字の色にもこだわって、1年半くらいかけて作っていきました。採算度外視で理想の形を突き詰めることができたのは、事務所やデザイナーチームがともに気持ちを重ねてくれたことがとても大きかった。「作るなら妥協は一切したくない」という気持ちがあったからこそ、本当に宝物のような1冊ができあがりました。
例えば写真をプリントして額装するときも、気に入ったフレームが見つかるまで「とりあえず飾る」ということは絶対にしません。だから、今回ウォールデコでプリントしたキャンバスの写真は、私が求めていたバランスと存在感でとても嬉しかったです。
---- 写真集に入れる写真を選ぶときは、どんな基準で絞っていったのでしょう?
MIKI*さん:私はなんでも直感でパパパッと決めていくタイプなので、絶対に入れたいと思う写真は最初からだいたい決めていました。あとはデザイナーさんたちが「MIKI*さんの写真は人との触れ合いが大きいから、これは絶対入れた方がいいです」と選んでもらったりして。でも、62枚まで絞るのに1年くらいはかかりましたね(笑)。
「HELLO」「WHO」「LIFE」「EAT」の4つに構成を分けて、私の人生に欠かせない人や風景との出会い、暮らし、食べることを織り込んでいきました。私の思いに気持ちを重ねて1年半の長い期間、制作してくれたプロデューサー、デザイナーをはじめ、写真集に関わってくださった方々に出会えたことが、一番の財産です。
好きなことには真っ直ぐに、頑固でいたい
---- 写真集の発表はもちろん、SNSやブログでも発信を続けてきたことは、MIKI*さんの生活にどんな影響を与えていますか?
MIKI*さん:やっぱり私の写真や、書いた言葉などに影響を受ける方が1人でもいるのであれば、嬉しいことや美味しいもの、旅で感じることなど、もっともっとシェアしたいという気持ちになります。自分のなかにしまっておくだけじゃなくてね。
私の書いた記事を見て、フランスのアルザス地方にある小さな村に行ってくれた人たちもいますし、旅のルートをたどってメッセージをくれたりもする。『フィガロジャポン』で5年続けているブログもそうですが、そういう反応があることがすごく嬉しいんです。
---- いろいろな表現方法をされるなかで、共通する「自分らしさ」とは?
MIKI*さん:どんなときも自分の軸がぶれないように、真っ直ぐ全力で取り組むことは大事にしていますね。基本的に頑固な性格なので(笑)。いただいたお仕事も、自分で見て、ちゃんと納得してから受けるようにしています。
モデルもフォトグラファーも役職がつくわけじゃないから、自分が得られるのは自分が働いたぶんだけ。それでも、好きなことをして、旅に出て得るものが仕事に活きてくるんだと思っています。やっぱり、わがままなんですよね。
---- でも、仕事をしていくなかで、わがままでいることもときには大切ですよね。
MIKI*さん:そういう私を25年、今の事務所が支えてくれて、見守ってくれているからこそ、私らしく好きを形にできるんだと思います。だからいろんな形でこれからも少しずつ恩返しができたらいいなと思います。そして何より、日々、私を支えてくれるスタッフや仲間、家族、SNSで私の写真を見てくれてるすべての方々に感謝の気持ちを忘れないことが大事ですね。
豊かさとは、穏やかな空間で家族と過ごすこと
---- ライフスタイルについてもお伺いしたいのですが、日々の暮らしでどんなことを大切にされていますか?
MIKI*さん:今まで好きなことをして、仕事もたくさんしてきたので、生活のなかでは家族と過ごす時間を一番大切にしていますね。平日の朝は2人とも仕事があるので、休日は向き合って会話をしながら朝食を食べます。夫がパンを焼いてくれるので、焼きたてのパンに合わせてキッチンに並んで料理をしたり、器を選んだり、一緒にゆっくりと食べるひとときがとても幸せ。
テーブルフォトを撮りはじめたのも、そういう瞬間を残したいと思ったからなんです。旅先じゃなく日常のなかで写真を撮るときは、食事や散歩の時間が多いかな。「その人らしさ」が滲み出ているから、人の手を撮るのも好きで、夫のこともよく撮っています。
---- インテリアや空間へのこだわりはありますか。
MIKI*さん:リビングダイニングは、私たちの好きなものをたくさん置いています。カイ・クリスチャンセンの大きなヴィンテージのウォールシェルフがあるんですが、この棚を置くためにこの家を買ったようなもので(笑)。この棚のお手入れをしたり、好きな作家さんの器を置いたり、写真や旅先で買ったものを飾ったり。すごく大切にしています。
ソファに座るとこの棚が見えるし、夫がパンを仕込んでいる姿を眺めたりできるから、ここで過ごす時間が大好き。家の中には友人たちからのいただきものも多くて、私たち家族を思って選んでくれた温かいものが、暮らしに溢れている。そういうつながりも私にとって大事な存在ですね。
---- MIKI*さんにとって、「豊かな暮らし」とはどういうものでしょうか。
MIKI*さん:安心して落ち着いて過ごせること、気持ちが穏やかになれることだと思います。コロナ禍で家で過ごす時間が増えましたし、窮屈さのない、居心地のいい家であることはとても大切。気を張って仕事をしたあとに、家族と好きなものに囲まれてホッとする瞬間が、本当に幸せだと感じます。写真を飾っていると、ふとしたときに旅の思い出を語り合えるのもいいですよね。
今はなかなか遠くに行けない日々ですが、「次はどこに行こうか?」って話している時間も楽しいです。これからも旅をしながら、写真を撮り続けていきたいですね。
MIKI*さん(@miki_rolleilife)
20代の頃からフィルムカメラで旅の写真を撮りはじめ、ドイツ製のオールドカメラで写した作品と、旅の思い出を綴った文章がSNSやブログで人気を集める。2018年には10年間にわたり撮影した3874枚の中から、62枚の写真を選び言葉を添えた写真集『Rollei Life』を出版。現在もフォトグラファーとして、また自身もモデルとして広告や雑誌などで活躍中。
Photo by 大童鉄平
Writing by 坂崎麻結
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