数々のお菓子ブランドを運営する株式会社ネネンでクリエイティブディレクターを務めたあと、2019年に独立し、フォトグラファー、スタイリング撮影、詩人「月森文」としても活動するなど、さまざまな分野で活躍するMai Murakawaさん。その豊かな暮らしぶりや、情景を美しく、ロマンチックに切り取った写真には、多くのファンが魅了されています。
今回、「写真と、ちょっといい暮らし。」では、Murakawaさんのクリエイティブにおけるこだわりを紐解くインタビューを実施。前編では、京都での生活にフォーカスし、「心の動く瞬間が多い」と語るお家へのこだわりや、写真を飾ることの魅力、そして気軽に写真をプリントしアート作品として飾れるサービス「ウォールデコ」を使用した感想についてもお話を伺いました。
心が動く瞬間が、たくさん生まれる家
---- Murakawaさんが写真を撮り始めたきっかけを教えてください。
Murakawa:13歳の頃に詩を書くようになり、20歳になる前にある出版社に詩を応募したら、お手紙をいただいて「写真か絵を付けてみたらどうですか?」とアドバイスを頂いたんです。ちょうど母から譲り受けたフィルムカメラを持っていたので、詩に合うような写真を撮るようになったのが今の写真の根本にあるような気がします。その後ブログをはじめ、日常をアップしながら趣味で写真を続けていたんですけど、前職の上司であり、友人でもあった株式会社ネネンの社長からの依頼で、「カヌレ堂」の商品撮影を行うようになって、仕事としての活動も広がっていきました。独立してからは、お菓子や化粧品、ファッション小物など、自宅での撮影を中心にお仕事をさせてもらっています。
---- 今年の4月に京都に移り住まれたそうですが、今のお家のどこに魅力を感じていますか?
Murakawa:緑豊かで、自然を感じられるところがお気に入りです。そういう環境のほうが一日の中で、心が動く時間が多いと思ったんです。蝶々がいるなとか、雨の音がするなとか、ちょっとのことで嬉しくなりますし、そうすると詩を書きたくなったり、本を読みたくなったり、別の意欲にもつながってくる感覚があって。 たとえば私が詩を書きはじめた13歳の頃って思春期で、いつも気持ちが溢れていたと思うんです。でも、大人になっていろんなことを経験して慣れてくると、あんまり心が動かなくなるんですよね。だからこそ、長い時間を過ごす家の環境を整えるのは大事だと思っています。
---- 心を動かすための工夫として、具体的にこだわっているポイントはありますか?
Murakawa:リビングにある、緑の見える窓の前の棚にはものを置かないようにしています。あとは、素敵なコップでお水を飲んでみるとか、自分のお気に入りのものを身近なところに取り入れること。
大阪に住んでいたときは、家自体がそんなに好きじゃなかったから、外に出てカフェで仕事するのが当たり前だったんですけど、この家に引っ越してきてからはほとんど外出しなくなりました。自分が好きだと思える家に住むことで、「今日はお花を買って帰ろうかな」とか、気持ちも変わるんだと実感しています。
---- お家が整っているぶん、外に出て刺激を受ける必要がなくなったんですね。
Murakawa:そうかもしれないです。外に出るというと、飲みに行くくらいかな。京都の左京区が好きで、そっちのほうにはよく遊びに行きます。左京区っていい意味で変わった人が多くて面白いんですよ。私もそうかもしれないんですけど、何やっているかわからない人がたくさんいるんです(笑)。
---- 今の家をもっとお気に入りの空間にするために、おすすめの方法はありますか?
Murakawa:まずは、家の中のどこか一角や、毎日行く場所にお気に入りのものを取り入れてみたらいいんじゃないでしょうか。最初は洗面台だけだったのが、じゃあ次はお風呂場も変えようとか、どんどん意識が広がっていくはずなので、小さくスタートしたらやりやすいかもしれません。
自分の希望や願いを、目に見えるところに飾る
---- たしかに、部屋を一気に変えるのは大変ですよね。
「お気に入りのものを置く」というのは、雑貨なんかはもちろん、アート作品を飾ることも含まれそうですが、作品は飾っていますか?
Murakawa:まだ引越したばかりなので、あんまり飾っていないんですよね。前は、絵や古い押し花を飾ってたりしたんですけど。今回お試しさせてもらったWALL DECOR(ウォールデコ)が久しぶりでした。
---- WALL DECORでは、ご自身のお気に入りの写真をセレクトしていただきました。どのようなお写真を選んだのか、教えてください。
Murakawa:また海外に行きたい思いを込めて、ポルトガルとイギリスの写真を選びました。毎日見るってことは、毎日ポルトガルやイギリスを思い出すことになるじゃないですか。想いを募らせていくことによって、その土地に近づいていける気がするんです。どちらの国も、コロナが落ち着いたらすぐにでも行きたいですね。
---- それぞれ、どのように飾っていますか?
Murakawa:ポルトガルの写真は、現地のレストランを訪れた際に撮影したもので、廊下に飾っています。階段を降りてきたときに見える場所なのと、もともとフックがついていたのでちょうどいいかなと。額縁がない「ミュージアムメタル」なので、壁やまわりの空間とも馴染んでくれて、いい意味でさりげなくてお気に入りです。
もうひとつはイギリスの海の写真。今住んでいる場所は海から離れているけど、こうしてお部屋に飾ることで、いつでも海を感じられるのは素敵だなと思いました。こっちは作業デスクの横の本棚の上に飾っています。ぱっと置いても存在感を出してくれるのがありがたいです。
---- イギリスの写真のほうで選んでもらったのはギャラリータイプですよね。額縁(テープ)や台紙(マット)の色を選べるのも特徴のひとつですが、どちらも黒を選んだのはどうしてですか?
Murakawa:写真が白っぽいし、置く場所にあるほかの家具が全部黒いんですよ。余計な色を入れたくないなと思ったので、迷わずセレクトしました。
写真を飾ることには、デジタルでは代え難い価値がある
---- 作品を飾ってみて、生活の中での気持ちの変化はありましたか?
Murakawa:大好きだった海外の風景を日常的に思い出せるし、「またいつか行くぞ」という未来につながる意識もキープできるので、すごくよかったです。目標や夢と直結することを目に見える場所に飾っておくと、潜在意識にも入ってきやすいと思うんですよね。
コロナ前の自分を振り返ってみると、よくあんなに世界中に行けていたなってくらい行動力があって。でも、もし今ひとりで行こうとしたら、きっと不安でドキドキしちゃうと思います。そういうときにこの写真を見ると、過去の勇敢だった自分を思い出せて、勇気をもらえるんです。
---- WALL DECORをどういう人におすすめしたいですか?
Murakawa:今の時代、スマホやPCなどのデジタル画面で写真を見ている人が多いと思うんですけど、現物として手元に残るのは、やっぱりデジタルには代え難い良さがあると思います。1枚写真が飾ってあるだけで、お部屋にもぐっとアーティスティックな雰囲気が出ます。
WALL DECORにはいくつかバリエーションがありますが、テープで固定できる種類もあると聞いたので、今まで賃貸住宅だからと飾ることを諦めていた人にもよさそう。それと、お友達や家族など大切な人にプレゼントするのも素敵だろうなと思いました。
---- 普段から写真を撮っていない方だと、もしかしたらプリントすること自体にハードルがあるかもしれません。
Murakawa:そうですよね。でも、写真をプリントすることってもっとハードルを低く見積もっていいと思うんです。フォトグラファーじゃなくても、みんな日常的にスマホで写真を撮っているじゃないですか。その中で、「好きだな」と思える写真も絶対あるはず。そのとき心が動いたからカメラを向けたはずなので、せっかくなら一度プリントして、その瞬間を形あるものとして手元に残してみたらいいと思います。
それに、自分の写真じゃなくてもいいと思います。私、地元の友達に「誕生日プレゼントにMaiの写真が欲しい」って言われることがあって。プロの作品じゃなくてもカメラが趣味のお友達とか、誰かの写真を飾ってみたらいいんじゃないでしょうか。きっと、生活に小さな変化が起こるはずです。
---- 今後の暮らしにおいて、実現したいことがあれば教えてください。
Murakawa:今の家に来てから、暮らしに余裕が生まれたぶん、気を配れる範囲が変わってきているのを実感しているんです。友達がハーブを乾燥させてお茶にしていたのを真似したくて、今、庭で育てています。あとは自分でめんつゆを作ったり。エコや添加物の問題もありますし、100%は難しくても意識できるところは行動に移して、自分で作れるものは作っていきたいですね。
後編では、Murakawaさんのこれまでのキャリアや、大切にされている価値観の軸について迫ります。
Mai Murakawa(@maii_mrkw )
1982年長崎県生まれ。紙ものなどを中心に扱うアンティークショップでの経験とお菓子やさんを運営する株式会社ネネンのクリエィティブディレクターとして撮影・広報・企画・ウェブディレクション・新ブランドの立ち上げ、ギャラリーALNLMのキュレーション等を手掛ける。2019年独立。スタイリング撮影、ネーミング、ウェブやパッケージのディレクションなどを主に活動。また、13歳の頃から"はじめての感情を忘れたくない"と教科書の隅に詩を書きはじめ、詩人「月森文」としても活動中。不定期に開催するスナックマイのママも。
Photo by 斉藤菜々子
Writing by 石澤萌