「東京建築女子」というInstagramアカウントで日本各地の美しい建築の写真をアップし、多くのファンを魅了している台湾出身の李昀蓁(リー・ユンチェン)さん。魅力的な建築のセレクトもさることながら、独自の視点で切り取られた静謐な建築写真たちは美しく、眺めていると思わずこちらまで建築を巡る旅に出たくなります。

そんな李さんに、建築写真を撮る時のこだわりや、彼女流の撮影のコツについて伺いました。

東京建築女子のInstagramアカウントにアップされている建築写真「東京建築女子」アカウント(@fuples)に投稿されている李さんの写真。

日本の建築を知りたくて。台湾から日本へ

東京建築女子・李昀蓁さんインタビュー

----現在は東京の建築事務所で働いていらっしゃるそうですね。日本に来ようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

李昀蓁さん(以下、李さん):学生時代に建築の勉強をしており、その時に日本の現代建築に魅了されました。日本の建築は面積が限られている中、工夫を凝らし、とても面白い空間を作っていると思います。

当時から、旅行がてら日本の建築を回っていたのですが、それだけだと時間が足りなくて。いっそ日本に住みたいと思うようになりました。

そこで大学院を卒業後、1年半ほど台湾の建築事務所で働き、その後、日本の語学学校に通いました。現在は東京に住み、建築事務所に就職。主にホテルの設計を手がけています。

東京建築女子・李昀蓁さんのご自宅で建築好きが垣間見えるインテリア李さんのご自宅にて、建築好きが垣間見えるインテリア。

----日本の現代建築が好きとのことですが、好きな建築家や作品はありますか?

李さん:建築ユニットのSANAAや石上純也さん、そして藤本壮介さんが好きです。今まで500以上の建築を見てきたと思うのですが、SANAAの西沢立衛さんが手がけた軽井沢千住博美術館や、石上純也さん設計の神奈川工科大学のKAIT広場は、とても印象に残っている建築ですね。

どれも一見シンプルですが、作るのがとても難しいと思います。

建築を上手に撮るコツは?撮影箇所の選び方や加工方法

東京建築女子・李昀蓁さんが台湾で出版した書籍李さんが台湾で出版した3冊の本。

----現在台湾で3冊建築の本を出版しているそうですね。本もInstagram同様に、李さんが撮影をしたのでしょうか?撮影にはどんな機材を使用していますか?

李さん:「東京建築女子」の活動を見てくださった編集者の方にお声がけいただき、台湾の出版社から日本の建築を紹介した本や、ホテルの紹介、建築を巡る旅の紹介の本など、計3冊出版をしました。これらの本もすべて私が撮影したものです。

Instagramにアップしている写真も、本に載せた写真もすべて、撮影にはiPhoneしか使っていません。

----一眼レフを使用しているのかと思っていました。iPhoneだけで撮影されているんですね!

李さん:そうなんです。一度、一眼レフを友人に借りてみたのですが、1日に何箇所も建築を回りたいため身軽な方がよく、私にはiPhoneがぴったりだと気がつきました。

POINT 1
写真は水平・垂直に。撮影後に加工してもOK

東京建築女子・李昀蓁さんインタビュー

----李さんが撮影する写真は建築の美しさが際立っているように感じます。建築をきれいに撮影するコツはありますか?

李さん:コツは、垂直と水平が歪まないように注意して撮影することです。これを気をつけるだけでも、画面が安定すると思います。もし写真に歪みがあった場合は、撮影後にiPhoneの編集機能で補正をしています。

その際に、画面いっぱいに被写体を配置すると切れてしまうことがあるので、空を多めに入れて撮影するなどの工夫をしています。

POINT 2
全体像とディテールの両方を撮影。ベストなアングルの下調べも

李さん撮影のSANAA設計の日立市役所庁舎李さん撮影のSANAA設計の日立市役所庁舎。全体像を写したもの。

----写真の"切り取り方"がすてきですが、建築のどの部分を撮影するか、どのように決めていますか?

李さん:全体像とディテールの両方を撮影するように心がけています。

まず、全体像を撮影する時は、撮影前に建物を離れた場所から見てみたり、後ろに回ってみたり、さまざまな位置から建築を眺めるようにしているんです。そうしてあらゆるところから見た中で、良いなと思った角度を撮影しています。

また、限られた時間で魅力的な写真を撮影できるよう、事前にアングルを調べることもあります。たとえば、建築から少し離れた丘から見えるアングルが良さそうだと知っていたら、その丘へのアクセスを調べておくことができるので。

李さん撮影のSANAA設計の日立市役所庁舎日立市役所庁舎のディテールを写したもの。李さん撮影。

建築関連の雑誌やWEBサイトを参考にすることもあります。そういうメディアに掲載されている写真は斜め45度から撮影されたものが多い印象ですが、私は建物の真正面が好き。なので、正面も押さえるようにしています。

POINT 3
撮影後の加工は、明るさ・コントラスト・彩度など。フィルム風加工も!

東京建築女子・李昀蓁さんインタビュー

----加工はどのようにしているのでしょうか?

李さん:撮った写真は必ず加工するようにしていて、iPhoneの画像編集機能や、写真加工アプリを使用しています。

まずは、iPhoneで傾きや垂直・水平の調整をしてから、写真加工アプリを使いますね。フィルム風のフィルターで加工を施して、その後に明るさを変えたり、コントラストを強くしたり、彩度を少し下げたりと、微調整をしていくことが多いです。

建築写真を部屋に飾る時、大切にしたいこと

----今回、李さんにご自身の建築写真でWALL DECORを作っていただきました。写真を部屋に飾る時は、どんな写真が良いと思いますか?

李さん:部屋に飾る場合は、インテリアとの調和を考えたいですね。色や雰囲気が周りの家具や雑貨に合うものや、浮かないものが良いなと思います。

私の部屋は白を基調としているので、今回のWALL DECORにも、飾ると空間に統一感がでる色合いの写真を選びました。

東京建築女子・李昀蓁さん作成のウォールデコ

数々の建築を巡っておさめた、李さんのお気に入りの1枚。次回は、そのこだわりの建築写真について、そして実際に部屋に飾ってみた感想をより詳しく伺います。

李昀蓁(リー・ユンチェン)さん
台湾出身、東京在住の建築士。Instagramアカウント「東京建築女子(@fuples)」で、各地の美しい建築写真を発信し、注目されている。

Writing by 齋藤 萌
Photo by 清家 翔世

WALL DECOR(ウォールデコ)
お気に入りの写真をパネルにできるサービスWALL DECOR。どんな写真にもマッチするシンプルなデザインで、飾る場所も限定しません。写真は「ギャラリータイプ」。マットは白、テープはライトグレーで制作。
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