海風をほのかに感じる街の片隅で、築70年以上にもなる古民家に暮らす写真家の柿崎豪さんと美容師の高山紗季さん。神奈川県横須賀市にある二人のご自宅は、賃貸物件でありながらもリノベOK。内装はもちろんキッチンの棚や庭先のサウナ室までDIYしながら、自然と調和した生活を楽しんでいます。

料理を楽しむようになったこと、素材に目を向けるようになったこと......。この家に移り住んで約3年で、たくさんの変化を感じてきたのだと教えてくれたお二人。そして、それはインテリアや写真への向き合い方、仕事にも影響を及ぼしているのだそう。

豊かな暮らしと写真の関係を紐解いていく連載企画【わたしの「写真と、ちょっといい暮らし。」】。今回は、柿崎さんと高山さんのお二人に、古民家暮らしに至った経緯から普段のライフスタイル、住まいを変えたことで生まれた「好循環」について伺いました。

過去の住人の痕跡を残しながら、自分たち好みの空間に

写真家の柿崎豪さんと美容師の高山紗季さん

----歴史を感じる、味わい深いご自宅ですね。どうして古民家に暮らそうと思ったのでしょうか?

高山紗季さん(以下、高山さん):もともとは2人とも東京で暮らしていたのですが、私が東京を離れようと思ったタイミングで、自分で手を加えられる家に住みたいなと思って。都心の賃貸物件だとビスを打つことも難しいけど、郊外ならDIY可の賃貸物件もありそうだからと調べるなかで、偶然この家を見つけました。

昔から古いものが好きだったから古民家に惹かれたのもありますが、街からも近いのに自然を感じられる立地で、家庭菜園ができそうな小さいお庭もあって、住むことを想像したらすごくワクワクしたんです。

柿崎豪さん(以下、柿崎さん):とはいえ、最初は家自体が斜めに傾いていて、とても住める状態じゃありませんでした。内見したときは「本当に住むの?」ってびっくりして......(笑)。最初は東京から毎週末通って、ひたすらDIYしていました。マイナスからのスタートだったので、住める状態になるまで結局半年くらいかかりましたね。

古民家感を残しながらリノベされたリビング----リビングの床以外はほとんどご自身で内装を手がけたそうですね。DIYや家づくりの知識はどうやって学んだんですか?

柿崎さん:本格的な勉強はせず、素敵なお店に行ったときに「この材料をこう組み合わせているんだ」と参考にして、家でも見よう見まねで再現していました。

高山さん:私は日本の古民家の雰囲気が好きだったんですけど、豪くんはもうちょっとモダンな感じが好みで。どんな家にしていきたいかというのも都度話し合っていましたが、私の好きなものと豪くんの好きなものが一緒にあっても変じゃないし、彼のことを信頼していたので、家づくりについてはほとんど彼におまかせしていました。

タイルの床やラワンや漆喰の壁などがDIYされた寝室の一角寝室の一角。タイルの床、ラワンや漆喰の壁など、あらゆるところがDIY

----その中でも一番こだわりを発揮した場所は?

柿崎さん:寝室とキッチンです。寝室は畳を剥がしたままの状態だったので、手を入れざるを得なかったというのも大きいんですけど、ラワンの壁にはこだわりました。キッチンは、きれいめだけどウッド感のあるキッチンってなかなか無いなと思っていたので、それを自分の手でつくれたのが嬉しかったですね。

手づくりの棚が印象的なキッチン高山さんお気に入りのキッチン

高山さん:キッチンの器を置く棚も豪くんの手づくりです。私の手が届きやすいようにと高さを調節してくれて、使いやすくて気に入っています。キッチンの漆喰の壁は、前の住人が塗ったものだよね。

柿崎さん:じつはリビングの床が段になっているのも、前に住んでいた人が施した跡です。家が斜めに傾いているから水平にするための工夫でしょうね。過去の住人の痕跡が見えたり、受け継がれる部分があったりするのもこの家の面白いところだと思います。

空間、暮らし、好きなもの。すべてに繋がりが生まれる

キッチンカウンター越しの高山さん

----家でよく過ごす場所や、好きなスポットはありますか?

柿崎さん:よく過ごすのはリビングですね。あとは最近庭につくったサウナ室と、ちょっとしたウッドデッキ。晴れた日はここで朝ごはんを食べています。

高山さん:自然が多いから気持ちいいよね。寝室とつながっていて、すぐ外に出られるのも便利です。

私は職場まで片道2時間かかるので、家にいる時間が少なくて......。その中でも料理の時間を楽しんでいるから、やっぱりキッチンが一番思い入れ深いし、好きです。土間のすぐ横でリビングとも繋がっているから、人が来たときはキッチンとリビングで会話できるんです。

写真家の柿崎豪さんと美容師の高山紗季さん

----この家に住み始めてから、生活の中身や質が変わった感覚もありましたか?

高山さん:そうですね。東京にいたときは新しいものに囲まれていたから、逆に古いものや普段見ないものに魅力を感じていたんです。でも、こっちに移って自然の中で過ごしたり、土を触ったりしているうちに、惹かれるものや考え方も変わってきました。

たとえば、料理ひとつとっても、東京で暮らしているときは「仕事を終えて食べるための料理」って感じで。でも、今は「この時間を飾るための料理」をつくろうとしている気がしますし、「この料理にはこういう器があったらいいな」と自然と考えるようになりました。

窓からは豊かな緑が見える

柿崎さん:料理でいうと、庭で野菜を育てていて、帰りがけにそれを摘んで今日のサラダにすることもあるよね。近くにおいしい野菜を売っているお店もあるし、より「素材」に目を向けるようになったかな。空間と暮らしと好きなもの、すべてが繋がっている感覚があります。

----それぞれが好循環をもたらしているんですね。

廃材を家具に、拾った石をオブジェに。自然体のインテリア

柿崎さん手づくりのレコードプレイヤー

----インテリアもお家の雰囲気に合っていてすごく素敵です。柿崎さん手作りのアイテムも?

柿崎さん:今目の前にあるリビングのテーブルは、家の改装時に出た廃材を活用しました。廃材は捨てるのにもお金がかかるので、だったら家具にしてしまおうと思って。

高山さん:私はレコードプレイヤーがお気に入り。私が音楽好きで、レコードを集めていたのを見て、東京にいるときに豪くんがつくってくれたものなのですが、いまの古民家にもマッチしているし、大活躍しています。

柿崎さん:既製品をベースにしているから、完全に手づくりってわけじゃないけどね。

オブジェには拾ってきた石も

----オブジェなどの"飾る"アイテムはどのように集めていますか?

柿崎さん:リビングに置いてある石は、そのあたりで拾ってきたものです(笑)。

高山さん:器は、気に入った作家さんの作品を買うことが多いです。昔は古道具屋さんによく行っていたんですが、この家に住み始めてからはもっと土っぽいもの、質感のあるものが好きになりました。

----柿崎さんは写真家として活動されていますが、自分で撮影した写真をインテリアとして飾ることもありますか?

柿崎さん:それが、実はあまりなくて。この家で飾りたいなと思いつつも、今まで機会がなかったんですよ。

高山さん:写真集はたくさん持っているのに、不思議だよね。

柿崎さん:飾らない理由もこれといってなく、本当になんとなく機会を逃していました。だから、今回WALL DECORを試させてもらってすごく嬉しかったですし、自分の「写真を飾る」ということへの思いも変化したような気がします。

WALL DECOR(ウォールデコ)  ミュージアムタイプ A2サイズ相当

写真との距離が近いながらも、写真を部屋に飾ることが少なかったお二人。今回、WALL DECORを試したことでどのような変化があったのでしょうか? 次回、普段の写真との向き合い方から、実際にWALL DECORを部屋に飾った感想までを伺います。

高山紗季さん(@_okayuuu
美容師。神奈川県真鶴町の美容室兼セレクト書店「本と美容室」店主。

柿崎豪さん(@kakizakigo
写真家。日本大学芸術学部写真学科卒。東京と神奈川を拠点に活動中。

Writing by 石澤 萌

Photo by 清家 翔世

WALL DECOR(ウォールデコ)
お気に入りの写真をパネルにできるサービスWALL DECOR。どんな写真にもマッチするシンプルなデザインで、飾る場所も限定しません。写真は「ミュージアムタイプ」。印画紙は、非常に高い光沢度とクリアな仕上がりの「クリスタル」を選んで制作。
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