東京都中目黒で、夫である渡辺礼人さんとともに花屋「farver」を営んでいる渡辺安樹子さん。
花屋同様、夫婦の美学が詰まったご自宅は、個性的な造形の花瓶などが目を引く一方で、それぞれが調和し、美しくまとめあげられています。店舗でもインテリアにこだわっている渡辺さんだからこその、思い入れが感じられる空間でした。
豊かな暮らしと写真の関係を紐解いていく連載企画【わたしの「写真と、ちょっといい暮らし。」】。今回は、渡辺安樹子さんに、写真や花などを "飾る" ことが日常にもたらすものについて、伺いました。
お店づくりのように夫婦で考えた、家族3人と愛犬が暮らすインテリア
----昨年こちらに引っ越してきたそうですね。この物件にした決め手は何でしたか?
渡辺安樹子さん(以下、渡辺さん):2023年の6月頃、こちらに越してきました。物件選びの際は、子どもの学区が変わらないことや、犬を飼えることなどが重要な条件だったんです。そんななか見つけたのがこの物件でした。
間取りは2LDK。キッチン、ダイニング、リビングが繋がっているため一部屋が大きく、元々持っていた大きめの家具が入りやすかったことや、建具などがシンプルだったので、持っていた家具が馴染みやすい点が気に入りました。それにグレーのタイルや丸い柱など、内装にもこだわりが感じられて、そこも良いなと思ったポイントです。
また家のインテリアは特に主人がこだわっているのですが、この物件を見た瞬間に家具をどこに置くか、レイアウトが浮かんだみたいなんです。家族の趣味にも合うし、ペット可の物件はなかなかないので、すぐに入居を決めました。
----引越しを機にインテリアは変えましたか?
渡辺さん:家具は、以前の家で使用していたものや、店舗で使っていたものを持ってきました。でも、以前の家では物が多かったため、引っ越しのタイミングで譲るなどして整理をしたんです。
家具のレイアウトは、間取りが変わったので変更しています。たとえば前の家では端に置いていた棚を、この家ではメインに。家具が一緒でも置き場所が変わると、また新鮮に感じますね。
新たに購入したものもあります。現在リビングに置いているカール・ハンセンのテーブルとチェアがそうです。我が家は古道具が多いため、そればかりだと無骨な雰囲気になりすぎてしまって。かねてからモダンな雰囲気を足してバランスを取りたいと思っていたんです。
----以前から使っていたものを活かしつつ、新しいアイテムもプラスしてできあがった空間なのですね。
渡辺さん:そうですね。主人とこの部屋の空間作りをしている時間はとても楽しく、内装をあれやこれやと考えたり、2人でDIYをしたりしてお店を作り上げた日々を思い出しました。
お気に入りは朝のひとり時間
----引っ越してまだ1年ほどとはいえ、とてもリラックスした空気が流れていますね。この家で、どのように過ごす時間が一番好きですか?
渡辺さん:朝、ひとりでゆっくり過ごす時間が好きですね。花の買い付けがあるため、主人は早朝に出かけてしまうことが多いんです。だから子どもが起きるまではひとりで過ごし、自分の内面と向き合う大切な時間にしています。朝は気持ちがニュートラルですし、季節によって感じ方も違い、気付きを得ることが多いです。
近くの公園へ犬の散歩に行ったり、帰ってきて感じたことをInstagramにあげたり、ソファで横になって、犬を撫でながらゆっくりしていることもあります。
----そうしたリラックスできる時間とは逆に、お忙しい時間もあるかと思います。仕事と日々の生活はどのようにバランスをとっていますか?
渡辺さん:好きなことを仕事にしているので、仕事とプライベートが分かれていないんです。空間を作ることは昔から好きですし、仕事、プライベートに関わらず花を飾るので、分けるのがなかなか難しくて......。花をどう飾るかやインテリアを考える時間はすごく楽しいから、あまりバランスは意識していないかもしれませんね。
暮らしの"導線上"に花を置く
----花瓶や本など、どれも見せる収納ですが、ばらついた印象にならず、調和が取れていますね。飾るアイテムや、飾り方にこだわりはありますか?
渡辺さん:どんなものを飾るかも重要ですが、土台になる家具に統一感があると、ばらついた印象になりづらいと思っています。たとえばうちの場合は、木の質感の家具を多く使っています。それがベースとなるので、素材や形がさまざまな花瓶を飾ってもまとまった雰囲気になるんです。
----大小さまざまな写真も飾られていますね。飾る写真はどのように選んでいるのでしょうか?
渡辺さん:写真展に行き、気に入った写真家の方の作品を購入しています。リビングに飾ってある一番大きい写真は、ニューヨークを拠点に活動している今坂庸⼆朗さんの作品です。
花という天然のものを扱っていることもあり、夫婦ともに自然が好きで、風景写真を手に取ることが多いかもしれません。
----言わずもがなではありますが、花瓶やお花もさりげなくステキに飾られていますね。
渡辺さん:花瓶は、花を活けなくても楽しめるものが好きです。面白いフォルムのものや、アートピースに近いものを揃えるようにしています。
花は、キッチンなどの生活の導線上に飾ることが多く、暮らしていれば自然と目に入るようにしています。お気に入りのものを見ると、気持ちが切り替わりますね。
----たしかに、このお部屋で過ごしていたら、自然とお花が目に入ってきますね。
渡辺さん:花だけに限らず、部屋にあるお気に入りのものたちから、日々ときめきをもらっているなと思います。たとえば家事をしていても、大切に集めたオブジェや花瓶が目に入ってくると、家事が苦にならないんです。
日頃から、仕事でも暮らしでも "飾る" ことを楽しんでいる渡辺さん。今回、ご自身で撮影した写真で作った『WALL DECOR』を飾っていただきました。次回は、普段の写真との向き合い方から、実際に『WALL DECOR』を部屋に飾った感想までを伺います。
Writing by 齋藤 萌
Photo by 清家 翔世