飾らない自然体の笑顔から、溢れる幸せが伝わってくるウェディングフォトが人気を集めるフォトグラファーの白井真斗さん。
撮影現場では「フォトグラファーというより、親戚のお兄ちゃんみたいに思って欲しい」と語るほど、柔らかく軽やかな距離感で家族の記憶に寄り添っています。
そんな白井さんに、1つ特別なお願いをしてみました。
「ご実家にある昔の写真を、整理してみませんか?」
白井さんが向かったのは、子どもの頃によく遊びに行った "おじいちゃん家"。そこで待っていたのは、何冊もの分厚いアルバムに収められた、数百枚もの大切な家族の記録でした。
今回は、その中から特に愛おしい40枚をピックアップしてデジタルデータ化し、さらにその中の"とっておきの一枚"を、90歳になるおじいちゃんへ贈るために額装していただくことに。
この体験を通して、フォトグラファーとして日々写真に向き合う白井さんが感じた写真の力とは。アナログとデジタルそれぞれの良さへの気づきについても、お話を伺いました。
白井真斗さん(@masato_shirai_)
大阪府出身、神戸市在住のフォトグラファー。システムエンジニア時代から、ウェディングフォトを中心にフォトグラファーとしての活動を始め、2025年に独立。Instagramにアップされる夫婦の日常も注目を集めている。
自身の楽しかった経験が原点。白井さんが写真を撮る理由

白井さんのInstagramより
----白井さんは、独立されてちょうど1年だそうですね。もともと、フォトグラファーを目指された背景を教えてください。
白井真斗さん(以下、白井さん):以前は、システムエンジニアとして働いていて、1日の大半を一人でPCと向き合って過ごしていました。
でも、僕は根本的に「人」が大好きなんですよね。30歳という節目を前にこれからの人生を考えたとき、本気で向き合いたいと思ったのが写真でした。
副業として2021年頃からフォトグラファー業を始め、昨年の2025年ようやく独立に踏み切りました。
----白井さんの撮る写真は、皆さんが本当に楽しそうで、飾らない自然な笑顔が溢れています。撮影の際に大切にされていることはありますか?
白井さん:僕、撮影中にめちゃくちゃ喋るんですよ。写真を残すことが仕事ですが、お客さまと一緒に旅をしているような感じかもしれません。
大切にしているのは、まずは人として向き合って、その場を楽しんでもらうこと。そして、僕自身も一緒に楽しむ。
お客さまにとって遠い存在のフォトグラファーではなく、「カメラを持っている友達」や「親戚のお兄ちゃん」のように思ってもらえたら嬉しいなと思っています。
それは、自分が結婚したときに写真を撮ってもらった経験が、すごく楽しい思い出になっていて。「写真っていいな」というその時の純粋な感動を、今度は僕が誰かに届けたい。そんな想いで、毎回シャッターを切っています。
アルバムが存在するからこそ生まれた、90歳の祖父母と写真を囲む時間

----今回、おじいさまのご自宅で写真を整理されたそうですが、全部でどれくらいの写真があったのでしょうか?
白井さん:分厚いアルバムが何冊もあって、全体では数百枚単位の膨大な量がありました。おじいちゃん、おばあちゃん、そして僕たち孫世代の思い出がぎっしり詰まっていて。今回はその中から、特に思い入れのある40枚ほどを厳選してデジタルデータ化しました。
----数百枚の中から選ぶのは大変そうですね。お一人で作業されたんですか?
白井さん:最初は一人で選ぶつもりだったんですが、結局、90歳のおじいちゃんもおばあちゃんも加わって、3人での賑やかな鑑賞会になりました。
僕は3人兄弟の次男で、お兄ちゃんと一緒に映っている写真が多かったです。僕は子どもの頃はおちゃらけてばかりで、その様子が写っている写真もたくさんあったし、中には泣きわめいているような写真もあって(笑)。「お前はあんときから変わらんなぁ」とおじいちゃんたちが大笑いしてくれました。

今回アルバムからピックアップして、デジタルデータ化した写真から。ハワイにてお兄さんと並ぶ白井さん

中央で楽しそうな表情の白井さん
----25年以上前の写真が、今この瞬間の会話を生んでいるんですね。
白井さん:僕にとっては幼稚園の頃の遠い記憶ですが、90歳のおじいちゃんたちにとっては、最近のことのように感じるみたいで。とても鮮明に話してくれるんです。その時間軸の違いに、胸が熱くなりました。

おじいちゃんが最近「もう一度行きたい」と語っていた上高地の写真も発掘できたそう
特に印象的だったのは、おじいちゃんの若々しい姿が写っている写真です。最近は会う機会も減ってしまったのですが、おじいちゃんは、家族が集まることが大好きで、楽しい人だったなと思い出しました。
写真の中ではプールで遊んだりしてすごくエネルギッシュで。その姿を再び家族で見られたことは、大きな喜びでした。それができたのも、アルバムとして写真が存在しているからこそだなと思います。
アナログの質感はそのままに、「懐かしい」「楽しい」気持ちをシェア

----今回、富士フイルムの「スキャンサービス」を利用し、古い紙の写真をデジタルデータにしていただきました。実際に体験し、率直にどう感じられましたか?
白井さん:すごく良かったです。もっと古い印象が際立ってしまうと思いきや、フィルムをスキャンしたかのような質感で、すっと馴染む、想像以上に高画質なデータになっていました。
なにより、データになったことで家族に気軽にシェアできるようになったのが最大のメリットですね。実は今回、妻の家族の写真も一緒にデータ化したんですが、義両親や親戚にシェアしたらそれだけで、ひと盛り上がりしたんですよ。
ダンボールキット(サービスパック)に写真を入れて送付するだけでデジタル化され、DVDで届く「スキャンサービス」
----懐かしい写真を話題に盛り上がるって、いいですね。それは、アルバムとしておじいちゃん家に置いてあるときにはできなかったことですよね。
白井さん:アルバムをめくる時間は、その重みも含めて特別なものですが、同じ体験を離れたところにいる人に共有することはなかなか難しいですよね。
一方で、そのときに感じた気持ちを誰かと分かち合うには、デジタルデータも良いなと。以前、アルバムの写真をスマホで撮影して見ていたときには、あくまでアルバムに貼られた写真でしたが、データ化によって一枚一枚が写真として蘇ったように感じました。

今回アルバムからピックアップした写真のなかの一枚。家族団欒のひととき
----デジタルデータ化することで、眠っていた写真が再び動き出すような感覚ですね。
白井さん:まさにそうです。全部を一度に整理しようとすると気が遠くなりますが、今回のように数十枚ピックアップしてデジタル化するのは、楽しい体験でした。
遠くに住む親族にも一瞬で送れますし、自分たちが再発見した「懐かしさ」「楽しい気持ち」を、写真という最高の会話の種と一緒にシェアできる。それが現代における写真の楽しみ方なんだと実感しました。
"ファインダー越しの愛"が伝わる1枚を、額装写真に
おじいちゃんと二人の写真を選び「+precious frame #001」で額装
----今回、デジタルデータ化した写真の中から1枚を選んで、「+precious frame #001」を制作していただきました。この写真を選んだ理由はありますか?
白井さん:この写真を選んだのは、おじいちゃんがこれほど屈託なく、全開の笑顔になっている姿が、僕の記憶にはあまり残っていなかったからです。数年前に一度アルバムを見返した時からこの1枚が強烈に印象に残っていて、今回額装するにあたって「形にするなら絶対これだ」と迷わず選びました。
木製フレームがインテリアに馴染みやすい「+precious frame #001」
「+precious frame #001」を選んだのは、シンプルなデザインで家のインテリアに合いそうだったのが一番の理由。
写真が引き立つように、上品な白のマット台紙、木のフレームはウォールナットを選びました。おじいちゃんに大きく見せたかったので、A4ぐらいのサイズ感もいいなと。

今回「+precious frame #001」で額装した写真
----お写真の中のお二人は、本当に幸せそうな笑顔ですね。
白井さん:はい。僕自身もめちゃくちゃ笑っているし、おじいちゃんの笑顔も本当に可愛い。この1枚を見ていると、シャッターを切る前に二人でどんな話をしていたんだろうとか、誰がどんな愛を持ってカメラを向けたんだろうとか、僕の記憶にはないはずの情景がどんどん浮かんできます。おばあちゃんかな、お父さんかな......。
誰かが僕たちを愛おしいと思って撮ってくれた。その事実が、この1枚に凝縮されている気がして。
----その「愛」を、今度はおじいさまにカタチにして届けるわけですね。
白井さん:おじいちゃんは今、家で過ごす時間が長いので、「暇や」と言いながらテレビを見て過ごしています。
だからこそ、この最高に幸せな瞬間をカタチにして、おじいちゃんがいつも座っている場所からよく見えるところに飾ってあげたい。この写真が、おじいちゃんの毎日に少しでも彩りを添えてくれたら嬉しいですね。
写真は単なる記録ではなく、時を超えて家族をあたためる「愛」

----今回の体験を経て、フォトグラファーとしての写真に対する意識の変化はありましたか?
白井さん:おぼろげだった記憶が、今回写真一つで自分のなかでもはっきりと思い出されるきっかけになりました。さらに、それが家族とも共有できて、そこでまた新しい会話や思い出が作られていく。写真は、未来でまた新しい記憶を咲かせるための大切な存在なんだと、改めて実感しました。
今の時代、スマホで手軽に何千枚も撮れますが、昔の写真、特にフィルムの写真は「1枚を撮ること」そのものへのエネルギーや、撮り手の愛が、今よりもずっと濃く詰まっているように感じたんです。まさに、写真は「愛そのもの」なんだな、と。
----これからのご自身の撮影でも、その気づきが大きな力になりそうですね。
白井さん: はい。僕が撮っている写真も、20年後、30年後に誰かがアルバムを囲んで笑い合うための大切な存在になるんだ、という自覚が強くなりました。
以前から大事にしていたことではありましたが、今回の体験を通して、改めて自分の中で一本通ったような気がします。この想いを大切に、これからも誰かの思い出となる写真を撮り続けていきたいです。
Writing by 秋山史織
Photo by 白井真斗
