光の差す縁側、ふざけあう子どもたち...何気ない日常の風景をとらえた、なつかしさを呼び起こす写真をSNSに投稿し、人気を博すはらかずあきさん。普段は会社員として働きながら、週末は築100年以上の古民家で家族を撮影しています。
そんなはらさんに今回、富士フイルムのプリント&ギフトのサービスを活用して、ご自身の写真を使ったフォトカレンダーを作成いただきました。
「写真を撮ることで、毎日がかけがえのない瞬間の連続だと気づけた」と語るはらさんに、家族を撮る醍醐味や、作成したカレンダーについて聞きました。
子どもならではの仕草を証として残したい
--はらさんは、どんなきっかけから写真を撮りはじめたのですか?
はらかずあきさん(以下、はらさん):もともとは、学校行事や家族旅行などで子どもや家族の写真を撮っていました。本格的に取り組むようになったのは、今から6、7年前。仕事で少し行き詰まって、「人生、このままでいいのかな」という思いが漠然と湧いてきたことがきっかけでした。
何かに本気で打ち込んだ経験がそれまでなかったのですが、あらためて「自分の本当にやりたいことはなんだろう」と考えたんです。それでふと、写真をやってみようかな、と。自分の取り組みが「証として残る」のが、いいなと思ったのかもしれません。
--どんな瞬間に、シャッターを切っていますか?
はらさん:子どもって時々、大人には思いもよらないような行動に出ることがあるじゃないですか。そういう瞬間を、よく写真に収めています。たとえばこれまでで印象に残っているものだと、縁側で洗濯かごのなかに入って座っている写真とか、ふてくされて階段の隙間に挟まっている写真とか。
そういった子どもならではの発想や、「そういえば、幼少期にこういうことを自分もやっていたな」となつかしさを感じるような仕草を見ると、思わず撮りたくなりますね。
もともと、子どもの顔写真をSNSにアップすることに対して、抵抗感が少なからずあったんです。そんな時に尊敬する写真家さんが、子どもたちの顔ではなく仕草を主役に、背景なども含めた雰囲気全体をとらえた写真を見て、「こんなふうに子どもを撮ることができるのか!」と衝撃を受けました。以来、家の中の様子とともに全身をおさめた写真を撮るようになりました。
あとは、光がきれいな瞬間。私が住んでいる家は古民家なので、縁側をはじめ窓がとても多く、美しい光がさっと差し込んでくる時がよくあるんです。そういう時は、「来て、来て!」と子どもたちに声をかけ、光のなかで自由に過ごしてもらっているところを撮影したりもしますね。
--「今、この瞬間」を逃さずにシャッターを切る工夫はあるのでしょうか?
はらさん:カメラをいつでも手に取りやすい場所に置いておくことは重要かなと思います。私は富士フイルムのX100Fというデジタルカメラを愛用しているのですが、小柄なモデルなので、さっと構えられるのが便利で重宝しています。それに、カメラが小さいと撮られるほうも身構えないで済むので、自然な様子をとらえることができるんです。
X100Fは、レトロなデザインもかっこいいし、アナログダイヤルをまわして操作する感覚にもなんともいえない手触り感があって、お気に入りのカメラです。
子どもたちとのコミュニケーションにも。7年間の思い出をカレンダーに
--今回、これまでに撮影してきた写真をカレンダーにするにあたって、壁掛けカレンダーと卓上カレンダーを選んだ理由を教えてください。
はらさん:デザインを考えるにあたって、写真が大きく使えることを重視して選びました。特に、私は普段撮った写真をSNSに投稿しているため縦長の作品が多く、同じく縦長の壁掛けカレンダーにはぴたりとハマりましたね。
--カレンダーに採用する写真は、どのように選定しましたか?
はらさん:1月から12月まで、これまでに撮りためた写真を撮影月ごとに分類して、その月の代表作を決めるつもりで選びました。今まで撮った写真は数万枚にもなるので、そのなかからの十数枚ということで、渾身の力作たちです。
--並べてみると、やはり縁側で撮られた写真が多いですね。
はらさん:そうですね。この家は私の曽祖父が建てたもので、じつは一度、取り壊して建て替えることも検討したことがあるんですよ。ただその時、古民家に詳しい設計屋さんが「こんな素敵な家を壊しては絶対にダメですよ」と。
それで思い直して、建て替えではなくリフォームをすることにしたんです。それが、のちのち写真をはじめてこんなにすばらしい舞台装置になるなんて、当時は思いもよりませんでした(笑)。
--12月と1月の写真は、いずれもこたつが写っており、同じ部屋、同じ画角で撮影されたものですね。
はらさん:1月のほうが、昔に撮ったものですね。12月の写真では末の息子がサンタクロースの帽子を被っているので、季節感があってちょうどいいと思い選びました。それから、「そういえば、ちょうど同じ場所で撮ったものがあったな」と思い出して。時間の経過が感じられて面白いだろうと、3人の子どもが写ったものを1月用に選定しました。
--プリントされたカレンダーを見て、ご家族の反応はいかがでしたか?
はらさん:長男も次女もやっぱり、喜んでいましたよ。いつもスマホなどの画面上で見る写真が、大きくプリントされていてインパクトもありますし。ただ、一番上の現在中学3年生の娘は、ちらっと見るだけで特に何もコメントしてくれませんでしたけどね(笑)。
卓上カレンダーは、離れて暮らすお義母さんに贈ろうと思っています。なかなか会いにいくことができないので、カレンダーで子どもたちの姿を見て喜んでくれると嬉しいです。
--普段から、撮影した写真をプリントする機会はありますか?
はらさん:今まではあまりなかったのですが、今年の1月頃に台湾の印刷メーカーさんが主催する写真展に、私の写真を使ってくださったことがありました。「こんな機会きっと二度とないから」と、家族みんなで見に行って、とても素敵な思い出になりましたね。
あとは自宅にあるプリント写真といえば、子どもたちが小さかった頃に妻が撮った写真で数冊、アルバムにしてリビングに置いてあるものがあって。たまに何かの拍子に子どもたちがふと持ち出して見はじめて、みんなで思い出話をしながら眺めたりすることがあります。
スマホの中にある写真だと、そうやって見返す機会はなかなかないので。みんなの好きな時に見られるようになるというのは、プリントするよさだなと思いますね。
私がこれまでに撮った写真もかなりの枚数がたまってきたので、フォトブックなどにまとめて、作品として残していきたいと思っています。
二度と撮れない瞬間を写真に収める大切さ
--はらさんにとって、家族の写真を撮る醍醐味とはなんでしょうか?
はらさん:写真を撮ることで、成長していく子どもの変化に敏感になれるなと感じています。普段の生活のなかで、仕事や育児に追われていた頃はなかなか気づけなかったのですが、日々は本当に貴重な瞬間の繰り返し。同じ写真は二度と撮れないんですよね。
SNSで写真をアップする際には、たくさん撮ったなかからセレクト、編集し、一枚一枚の写真を見つめる時間が長くなるので、作業をしながら余計にそのことを実感します。
カレンダーに採用したこたつの写真について先ほど話したように、同じ場所、同じ画角で撮ると、明らかに大きくなっていることがわかるのも家で撮る家族写真ならではだなぁと。それに、私がこれまで撮ってきた「子どもらしい仕草」って、成長するごとにやっぱりだんだんと減ってくるんです。
だから、今小さなお子さんがいる方々には、「とにかく今しか撮れない写真を今のうちにたくさん撮っておいてください」と心から伝えたいです。
--お子さんたちが大きくなってきた今、どんな写真を撮っていきたいと考えていますか?
はらさん:一度、成長した子どもたちの姿を真正面から撮ってみるのも面白そうだなと思います。子どもの頃のような自然な面白い仕草などは、もうあまりしてくれませんから、モデルさんのようにポーズをとってもらうとか。
もしかしてお小遣いをあげないと撮らせてくれないかもしれませんが(笑)、どんなものが撮れるのか、ぜひ試してみたいですね。
はらかずあきさん(k_botchan)
長野県の古民家で暮らす3児の父。普段は会社員として働き、週末フォトグラファーとして家族の写真を撮影し、SNSで発信している。
Writing by 原 里実
Photo by はらかずあき