何気ない日常の風景を写真に収め、SNSで発信するTKさん。誰しもがどこかで目にしたことがあるような懐かしい風景にもかかわらず、その写真のなかでは美しい、特別な色彩を放っているように感じられます。
そんなTKさんが愛用しているカメラは、富士フイルムのX-T4。カメラ選びの決め手になったのは、「Xシリーズ」「GFXシリーズ」に搭載されている機能「フィルムシミュレーション」だといいます。
撮影意図に合わせてフィルムを取り替えるように、発色やコントラストを変化させることができるフィルムシミュレーション機能。TKさんは日々の撮影でどのように活用しているのでしょうか?そして、日常の一コマを写真で切り取る醍醐味とは?インタビューでたずねました。
ファインダー越しに見える、いつもの日常の新たな世界

--まずは、写真を撮るようになったきっかけから教えていただけますか?
TKさん:僕はもともと趣味でギターを弾いていて、「演奏してみた」動画を素敵に撮りたくて、機材を探しはじめたんです。調べるなかで富士フイルムのカメラに搭載されているフィルムシミュレーション機能を知り、動画撮影に使ってみたいなと思い、購入を決めました。
実際にカメラを使うようになると、やっぱり写真も撮りたいと思うようになって。
SNSに流れてくるいろんな写真を参考にしながら、最初は人物を撮ってみたり、絶景を撮ってみたり、いろいろと試しました。そのなかで、自分には日常スナップがいちばん合っているなと感じて、今のスタイルに落ち着きました。
--日常スナップのどんなところに魅力を感じたのですか?
TKさん:日常の風景って、カメラを始めるまではまったく目に留まっていなかったんです。だけど、知っている道や見慣れた風景でも、朝日や夕日が差したり、それをファインダー越しに覗いて写真に収めたりすることで、こんなにも素敵に見えるんだと。そういう感動が、もっと撮りたいという衝動に変わっていきました。

季節によって光の強さや質感がまったく違うことにも、カメラを始めてから気づきました。カメラは、僕がそのときその場で感じた季節や空気、そのままを残してくれる。スマホで撮る写真とは、情報量が違うなと感じます。

「記憶色」を忠実に映し出すフィルムシミュレーション
-- Xシリーズにはさまざまなフィルムシミュレーションが搭載されています。TKさんが気に入っているフィルムシミュレーションはどれですか?
TKさん:僕は「CLASSIC Neg.(クラシックネガ)」をいちばんよく使っています。富士フイルムは、センサーが記録した色ではなく、人が見たままに忠実な「記憶色」の再現にこだわっていますよね。その技術をふんだんに活かしたのがフィルムシミュレーション機能だと思っているのですが、なかでも「クラシックネガ」は、僕にとっての記憶色......懐かしさを感じる色にとても近いんです。
僕はずっと地元の栃木県に住んでいて、小学校のときに歩いていた通学路を今も散歩して写真を撮ったりします。クラシックネガでファインダーを覗くと、自分が撮るというより、もはやカメラが撮らせてくれるような感覚があります。

--「クラシックネガ」を通して風景を切り取ることで、記憶のなかの風景を見ているような感覚が生まれるんですね。
TKさん:どのフィルムシミュレーション が自分にとっての「懐かしい色」だと感じるかは、人によって違うでしょうし、僕も気分によって別のフィルムシミュレーション がしっくりくるときもあるので、そのときの気分や撮影するシーンによって使い分けています。

(左)PROVIA(プロビア) (右)Velvia(ベルビア)
例えば、「プロビア」はできるだけ加工しすぎず、そのままの空気を伝えたい時に重宝します。「ベルビア」は、色が鮮やかに映るので花などを撮るときに使うことが多いです。
「クラシッククローム」は、落ち着いた色味が特徴的で、静かな気分のときに使うことが多いですね。
撮ろうと思ってファインダーを覗いたら「何か違うな」というときは、画角を変えてみたり、構図を変えてみたり、いろいろな選択肢がありますが、富士フイルムのカメラだったら「フィルムシミュレーションを変えてみる」という手もあるんじゃないでしょうか。それだけで、同じ構図や画角でもしっくりくることが、僕はよくあります。
フォトカレンダーで自分の写真と向き合うきっかけに
--今回は、富士フイルム「プリント&ギフト」のサービスで、TKさんが撮影した写真を使ってフォトカレンダーを作っていただきました。使用する写真はどのように選定しましたか?
TKさん:月ごとの写真は、その月を象徴するような空気感を持った写真を選びました。全体としては、地元で撮った身近な風景と、旅先で出合った印象的な風景をバランスよくミックスさせています。
特に壁掛けカレンダーについては、写真が大きく使われるので、どんな部屋に飾っても調和するようなバランスや、壁に掛けたときに抜け感が出るようなイメージも大切に選びました。
--選んだなかで、特に印象に残っている写真があれば教えてください。
TKさん:卓上カレンダーの7月に使った写真です。これは去年の7月、熊本に住んでいる友人の結婚式に行ったとき、1人で旅行していてたまたま出合った風景なんです。

あとから調べてみたら、カメラをやっている人の間ではけっこう有名なスポットだったようです。僕は知らずに電車に乗っていたら、たまたま車窓から見えて、撮ってみたいなと思って途中で降りました。歩いていると地元の人が「どこまで行くの?」と声をかけてくれ、車に乗せてもらってたどり着きました。そんな思い出も含めて、お気に入りの一枚です。
--ロードムービーのようで素敵なお話ですね。カレンダーに選んだ写真は、すべてクラシックネガで撮影したものですか?
TKさん:「ASTIA(アスティア)」を使ったものもあります。4月の桜と、5月のマジックアワー、それから12月のイルミネーションですね。

4月に使用した写真
「アスティア」は、「クラシックネガ」に比べて、色やグラデーションがはっきり映ります。
4月の桜の写真は、桜のピンク色と空の青色を共存させたかったのですが、「アスティア」がいちばん色味のバランスがよく、自分の欲しい色を出してくれたので、使用しました。

5月に使用した写真
マジックアワーの写真も、「アスティア」のおかげで空の色のグラデーションがきれいに出たと思います。
--その場でファインダーを覗きながらフィルムシミュレーションの切り替えができるのは、やはり便利ですね。プリントの質感はいかがでしたか。
TKさん:質感はもちろん、特に色味が素晴らしくて。普段SNSに載せるときは、見る人のデバイスの液晶性能によって、微妙に色味が変わってしまいます。でも、今回印刷した写真は、自分が意図したそのままの色味でアウトプットされてきたので、感動しました。スマホで見るのとは感じ方がぜんぜん違いましたね。
じつは、自分の写真をプリントすること自体、今回が初めてだったんです。こんなことを言うのはちょっと気恥ずかしいですが「自分の写真っていいな」と素直に思えました。

考えてみると、あらためて自分の写真と向き合う機会が今まであまりなかったのかなと。昔は、撮ったあと現像するまでが写真だったと思うんですけど、それってすごくいいことだったんだなと気づかせてもらいました。これからはもっと積極的に自分の写真をプリントしたり、飾ったりしたいなと思います。
新たな撮影スタイルで表現の幅を広げたい
--今後、どんな写真を撮っていきたいですか?
TKさん:今までは風景がメインで、人の気配があまりない写真を撮ってきました。被写体と正面から向き合うのがちょっと恥ずかしいという感覚があって、ポートレートに苦手意識を持ったままここまで来たんです。
でも、昨年から今年にかけて、友人に赤ちゃんが生まれて、ニューボーンフォトや家族写真を頼まれる機会が何度かありまして。苦手ながらも挑戦してみたら、自分が撮った写真で人に喜んでもらえるのはうれしいものだなと実感しました。
それで最近は、風景のなかに人の気配をちょっとにじませたような写真とか、ポートレートと日常スナップをミックスさせたようなスタイルに挑戦してみたいと考えています。
また、今までは地元の風景が多かったのですが、冬にはスノーボードをやるのも好きなので、カメラを持って行って雪山を撮りたいですね。その際は、「ETERNA BLEACH BYPASS(エテルナブリーチバイパス)」というフィルムシミュレーションを使用したいです。

(左)ETERNA BLEACH BYPASS(エテルナブリーチバイパス)(右)CLASSIC Neg.(クラシックネガ)
この写真のように、他のフィルムシミュレーションと比較すると、かなりトーンが落ちて静かな雰囲気になるので、冬の静けさに合うんじゃないかなと思っています。
TK(@tk__kyosuke)
フォトグラファー。何気ない日々の記憶をInstagramに投稿している。光や影の印象を映し出すのが得意。ギターやスノーボードも趣味。
Writing by 原 里実
Photo by TK




